一、焚火たきび(11)

「李叔遜、戦友困ってるぞ。こんな時どうすんの?」
「えーっと、」
オシッコ我慢してるみたいな格好でキョロキョロし始める叔遜。
「王什長、部下が困ってるぞ。こんな時どうすんの?」
王什長は俺の肩に手を乗せて、もう片方の手で雑踏のほうを指差しながら什のみんなに呼び掛けた。
「五十六名ってんだからあそこらへんでとりあえず切ろうぜ。来いよ。」
さすが什長は頼りになる。俺の胸は什長に対する信頼と愛情でいっぱいになった。
「ここからへんから後ろの人はもう下がってー。絶対行き渡んないから。」
「先頭決めろ。」
「ここ先頭ー。」
「こっち最後尾。」
「この向きに並んで下さーい。」
「一列。」
我々十一人の獅子奮迅の働きにより事態ようやく収拾、すると隊長が呑気にこうほざいた。
「偉いなあ、やるじゃん。やっぱこうでなくっちゃな。」
「じゃあなんで早い者勝ちっておっしゃったんですか!」
「俺いじわるなんだよ。へっへっへ。」
「最悪だ……。」
「で、いま貰えなかった人達、もし興味あればここに餡と生地があるから自分らで包んで焼いて食えば? 人数分あると思うけどな。仲良く上手に分けろよ。めんじゃねえぜ。誰が仕切る? 君?」
「えっ、……。」
よりによって見るからに気の弱そうな年の若い隊員に押しつけやがった。鬼だ。俺はぶちキレて叫んだ。
「隊長が分けて下さいよ。」
「俺にやれってかい。うん、いいよ。」
ズコッ。意外に気さく。
「要らないって奴いないわけ? 一人も? マジかよ。ビックリだな。面倒じゃねえのかよ。よくやるぜ。」
笑いながら具材を分けにかかる。みんな食い入るように手元を見つめる。
「超旨そう。」
「いい匂いしてたな~。」
「今日は全員揃ってたな。みなさん元気で大変結構です。ってことは、残り三百九十四人、あと什長に屯長ね。うわ面倒くさっ。こんなん俺がやったって面白っくねえんだよ。野郎ども行儀よくしやがれ、って言えばたぶんみんな言うこと聞いてくれるだろ。もっと対等な仲間同士でやったほうが面白えって。みんなの自制心とか思いやりとかお利口さんなところとか見たいじゃん?」
「そういう目的でやってたんですか、これ。」
「趣味。」



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