一、焚火たきび(2)

「俺べつにいいや。帰ろっと。」
「あっ、待って待って。季寧きねい、くじ運いいじゃん。代わりに引いてよ。っつうか、俺が引いて、外れたら季寧も引いて、それがもし当たりだったら俺のと交換すんの。」
「それ不正じゃん。」
「大丈夫大丈夫、俺と季寧は一心同体だっつって言いくるめるから。」
「え~、それ面倒くせえ。もし万一当たっちまって、くじの交換不可だとか言われたら最悪じゃん。」
「そんななりたくねえの? 勤務兵。」
「当たり前だよ。偉い奴に目をつけられていいことなんかねえじゃん。」
「でも交戦中ずっと将校のそばにいられるぜ。隊長に貼り付いてる限りは最前線で血しぶきを浴びることなんかまずねえだろ。」
「そっか、それはいいかも。」
言ってる間に前方でどよめきが起こった。副の当たりが出たらしい。
「あ~、残りは正だけかあ。」
「面倒くせえな。たまに隊長に得意料理でも作らせて食ってやろうって魂胆なら、副ぐらいの距離感がちょうどいいのに。」
「季寧ぜったい当たりを引きそうじゃね? みんなが当たり引きた~いって頑張ってる時にたった一人しらけた奴がいたら、ぜったいそいつに当たりくじが寄ってくだろ。」
「考えすぎだよ。」
「世の中、皮肉にできてるからなあ。そんで、なんだかんだともめた挙句、結局くじの交換もできなくて、季寧が正勤務兵になったらウケる。」
「そうなったら俺くじを投げ捨てて全力疾走で逃げるから。叔遜くじ拾えよ。」
「そこまで嫌なの?」
「当たり前だよ。馬鞍山の生き残りなんて、ぜったい変な奴に違いないって。」
「生き残りじゃないじゃん。僵屍キョンシー戦士。」
「不気味すぎ。料理上手だっつっても、ぜんぶゲテモノ料理らしいしよ。ハクビシンとかコウモリとか捕っては食ってるって噂じゃん?」
「ハブって旨いらしいな。あの例の疾病で手術されてた周季越しゅうきえつって奴、あいつ韓英の部下だったじゃん? その季越がさ、ハブを食ったら人生変わる! 激ウマだ! って言ってたぜ。」
「人生変わりたくねえし。」
「あ~、楽しみだなあ、季寧が当たりくじを引いて呆然としてる顔見るの。あ、でもその時は呆然としてないで素早く俺にくじくれ。」
「うん。叔遜にくじ手渡して全力疾走で逃げる。」
計画を話し合っていたら少し安心した。もし万が一当たりを引いたら、見なかったことにして走って逃げちまおう。



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