一、焚火たきび(6)

「どうして片っ端から書類を開いてるんですか?」
「なんかお宝でも挟まってねえかなと思って調べてる。」
「ないと思いますけど……。」
「秘密の恋文とか? ひゃっひゃっひゃっ。いやいや、故人に失礼なこと言っちゃいけないな。」
「巻くの追いつかないですよ。本気で全部開くんですか。」
「うん。こっち終わったら俺も巻くのやるから。でよお、いま二つの山に分かれてんじゃん? この小っちゃい山の方を優先的に巻いてくれ。大きい山は焼却する分だから適当でいいよ。」
「えっ、なんで捨てちゃうんですか?」
「要らないかなーと思って。」
「そんなの一瞬開いただけで分かるわけないじゃないですか。」
「顔つきで分かるぜ。」
「顔?」
「万一まちがって要るもん捨てちまっても命までは取られねえって。仮に俺が死刑になったところで君には類は及ばないから心配するな。」
「そりゃそうですよ、だって自分字読めないですもん。」
「結構なことじゃねえかよ。文字ってのは諸刃もろはやいばだからな。趙さんこの書類の山に埋もれて死んじゃったんだろ? 仇討ちだ、仇討ち。」
「ほんとにそんなドカドカ捨てちゃって大丈夫ですか?」
「やっちまえばなんとかなるって。ドカドカドカドカ! 捨てて捨てて捨てまくれ! 大ドカ捨て祭り! 文書偏重の悪しき風土に一石を投じようではないか! あー面白え。こんな大事そうなもんまで捨てちまおっと。エイッ!」
「えっ! なんで?」
「大事なことは胸に刻み込め! ちまちま文字なんかに起こしてんじゃねえバッキャロー!」
おお~、怖え~。なんだか分からないが、笑いながら怒りながら、すさまじい勢いでゴミの山を築いて行く。オヤ、腕まくりですか。うっすら汗までかいてるし。頭おかしいんじゃねえか。口元は笑っているが、目がイッちゃってるぜ。ぜったい必要なもんまで捨ててるだろ。誰が責任とるんだろう。まあ、確かに隊長が言っていたとおり、万一まちがって要るもん捨てちまっても命までは取られないんだろうけど。なんて態度だよ。ふざけた野郎だ。
 ノリノリで書類を捨てまくっていると思ったら、ふと手を止めて
「朝礼の時間だな。行こ。」
と俺の背中をぽんと叩いてスタスタと部屋から出て行く。動作が突然すぎてびっくりだ。



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