十、陳倉城(14)

「ちょっと、離れて下さいよ!」
「楽しいなあ。ひゃっひゃっひゃっ。」
言いながら盾の向きを直してやっている。
「さあて、他に盾の使い方が下っ手クソな奴いねえかな~。俺様が直々になおしに行ってやるぜ~。」
「ひええ、師範、これでいいですかね?」
みんな、隊長が接近する前に自分の屯の師範に構えを直してもらいながら、なるべく隊長を遠ざけようとする。
「オラオラ、どこだ~? 下っ手くそな奴~。ヘタにやってっと俺様がそっちに行っちゃうぜ~。」
「隊長、もうちょっと下がって督戦して下さいよ。こんな近くにいたら矢が当たるじゃないですか。隊長はいいですけど、旗が痛みますよ。」
旗手の劉子倫りゅうしりんが隊長旗を心配する。
「いいじゃん、旗が矢を被ってボロボロになってたら、俺らよく働いたなぁって感じしねえ?」
「しませんよ。隊長ふざけすぎ! ものは大切に使って下さい。」
「ひゃっひゃっひゃっ。」
べつにふざけちゃいないと思うけどな。態度がお気楽そうに見えるだけで、実際には真面目に仕事をしているに違いない。この日は矢の降り注ぐ中での作業だったにも関わらず、負傷者は一名だけだった。右手の親指の付け根に矢を被ったという。べつにそれで後方に下がるということもなく、処置だけしてみんなと一緒の場所にいながら休んでいた。片方の手で盾を持っていなければならないから、片手が使えなかったら作業には参加できないわけだ。



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