十二、苦肉の計(10)

 ふうん、見世物か。なるほど。今日の一連の冒険は、全て仕組まれたものだったってわけか。そういえば最初から少しおかしかった。隊長は抜群の運動神経の持ち主だ。大事なお肉を挟んでいる箸にむざむざと矢を被るわけがない。朝、食事中にブチ切れるというところからすでに、芝居は始まっていたのだ。思い返してみれば、箸を自分からわざわざ矢の軌道に合わせて動かして当てているようにも見えた。なんて芸の細かい野郎だ。まったく呆れる。食べるの大好きな隊長が、大事なお肉を地面に落してまで一芝居打ったとは。これぞまさしく苦肉の計だ。

 群衆の興奮から離れ、隊長がこちらを向いた。
「さて、お疲れさん。出血してる箇所がないか確認し合おうぜ。お前先に見せてみな。」
これは戦闘終了後に必ず行うことだ。興奮状態にあると負傷していても気付かないことがあるので、二人一組で体の状態を観察し合う。四日ぶりに鎧を外す。隊長の顔を見るのもずいぶん久しぶりのような気がする。
「よし、前は大丈夫。こんど後ろ。」
なにを細かく見ているのか知らないが、モショモショとやっている。まさか矢傷がいっぱいついているわけじゃあるまいな。
「よし大丈夫だ。じゃこんど俺な。前は大丈夫だから後ろ見てくれよ。」
ちなみに、鎧は外すが服は着たままだ。破れたり血が付いたりしていなければ、それで大丈夫ということだ。
「はい、大丈夫です。」
「スゲエな二人とも無傷かよ。奇跡だな。俺ら運がいいなあ。」
「そんな、無傷だったら奇跡、なんていう冒険しちゃだめじゃないですか。」
「季寧、よく落ち着いて行動してくれたな。偉いぞ。」
褒めんなって。
「この矢どうします?」
「丁寧に抜いて再利用しようぜ。」
さっそく鎧や盾に刺さった矢をせっせと抜き始める。
「税金泥棒って言い様はよかったですね。」
「なあ、奴ら矢を無駄遣いしやがって。税金泥棒だよ。うわっ、……」
にわかに顔を曇らせて沈黙する。
「どうしたんですか?」
ふうっと溜息をついて、かすれ声で悪態をついた。
「……ったく危ねえなあ。ふざけんな。」



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