十二、苦肉の計(12)

 俺が資材置き場から縄を持って帰って来ると、隊長はあらかた矢を抜き終わり、背中を丸めて劉信の放った毒矢に向かってぼそぼそと話しかけていた。
「俺だって真面目に働いているオッサンのことを税金泥棒だなんてホントは言いたくなかったんだぜ。」
なに言ってんだコイツ。声かけづらい。それにちょびっと可笑しい姿でもある。こっそり隊長を指さしてニヤつきながら、横にいた立哨りっしょう
「なんか孤独な後ろ姿だな。」
と言うと、立哨の奴も同意して声を殺して笑った。ひとしきり笑った後、
「後ろ姿って言えば、おまえ背中になんか卑猥ひわいな図案が描かれてるぜ。」
と言われた。
「えっ、なに? なに?」
「こりゃなんだ。亀?」
「隊長!」
思わず叫んだ。隊長は落ち着き払った声で説明する。
「知らねえのかよ。それは北の方角を司る神獣だ。誰だ卑猥な図案なんて言った奴は。」
「だってこの首から頭にかけての形があまりにも生々しい。」
「それは君がいつも生々しいことばっか考えてるからそう見えるんだって。」
「いや絶対わざとでしょう!」
「絵うまいっすね。」
「いつのまに描いたんですか!」
「あとでなんか描いといてやるって言っただろ? 有言実行の人なんだ俺。」
ひゃっひゃっひゃっと笑っている。さっき出血がないか確認し合った時に、なんかモショモショやっているなと思ったが、きっとその時描いたのだろう。なんて芸の細かい野郎だ。じつに呆れる。



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