十四、一心同体(2)

 型の練習が終わり、休憩が入る。みんな物珍しげに新入りを囲む。囲むわりにはあんまり話しかけない。なんでえウチの屯は内気な奴ばかりかよ、と思っていたら、新入りのほうから俺に
「隊長付きの当番なんですよね。」
と話しかけてきた。
「え、うん。」
物怖じしない年上の後輩から不意に話しかけられてドギマギする。
「隊長はどんな方なんですか?」
「えーっとね、変人、馬鹿、鬼、悪魔。」
同僚から次々にツッコミが入る。
「違うだろ。神だろ?」
「不死身、超能力者。」
「殺人拳法と飛刀の使い手だ。」
「バケモンじゃあるまいし。あいつはただの変な野郎だろ。」
「いや、バケモンだろ。だって僵屍キョンシーだろ?」
偃師偶人アンドロイドだって話もあるぜ。」
「心臓が三個あって胃が六個あるんだっけ。」
「どうりで腹壊さねえわけだ。一個の胃がいかれても他の五個で消化してるんだな。」
新入りは狐につままれたような顔をする。
「一見普通っぽい人のように見えますけど……。」
「いやいやいや、普通じゃない。あれは絶対普通じゃない!」
みんな口をそろえて勢い込んで否定したものの、ヤツの異常さをどう理解させればいいだろうか。李仲胤りちゅういんの上官のりゅう什長は
「う~ん、なんか考えないとなあ。」
と考えながらトコトコと隊長の方に歩いて行く。この人はどちらかといえばせっかちな性質たちで、考えながら体が動くんだ。隊長のところに到着するまでに考えがまとまったらしい。
「隊長、今日また散兵戦やって下さいよ。」
「え、なんで?」
李仲胤りちゅういんが隊長のことを普通の人だと思ってるみたいなんで、誤解を解かないと。」
「それ新入りをイジメてやろうって魂胆か? 自分で手を汚したくねえもんで新入りを俺にけしかけて痛い目に合わせようっていう。」
「うわっ、そう解釈するんですか。性格悪いっすね。違いますよ。隊長の雄姿をちょっと見せてやりたいじゃないですか。」
「ケッ。ふざけんな。」
だめだよ劉什長。隊長はへそ曲がりなんだ。雄姿なんていう耳触りのいい言葉で機嫌をとって思うように動かそうとしたって、絶対動くはずがない。俺は真面目な顔で口を挟む。
「我々生死を共にするんですから、お互いのことをよく知るのは重要なことですよ。もし仲胤ちゅういんが隊長のことを普通の人だと思ったまま次の遠征が始まったらどうなると思いますか? 本番で隊長の醜態をの当たりにして動揺すれば作戦行動に支障をきたしますよ。」
「う~ん、なるほど。じゃ、やっとこっか。散兵戦。」
ほらね。「雄姿」を「醜態」に置き換えてやったら、コイツは動くんだ。



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