十四、一心同体(3)

 休憩が終わると、隊長はにこやかに言った。
「お次はごきげんでいっちょ散兵戦やるとしよう。棒のお仕度しておいで。」
「やったあ!」
みんなチャンバラごっこが大好きだ。全力疾走で棒を取って来る。
「ギャハハハ、素早いな。新人のいるところはどうやって遊べばいいか教えてやれよ。じゃ始め。」
和気あいあいとチャンバラをやって遊ぶ奴らもいれば、始めの合図とともに
「韓英を殺せ!」
喊声かんせいをあげ隊長にかかっていく奴らもいる。さっそく乱闘が始まる。俺は今日は新入りと同じ目線から高みの見物を決め込む。いい眺めだ。
「あれが殺人拳法なんですか?」
「そ。全て急所攻撃。いちおう殺しちゃいけないと思いながらやってるみたいだけど。」
「棒とか使わないんですね。」
「なあ。変な野郎だろ?」
隊長の非常識な様子を新人に紹介できて満足だ。
 俺達はささやかにチャンバラやって遊びながら、
「ほら、今の突きはさっきの軍刀術の型の十二がちゃんとできてればかわせるんだぞ。もう一回やってみよう。」
なんて、優しく新人の面倒を見ている。しかしよその新人の中には、可哀相にさっき隊長が言っていたように、隊長にかかっていくようけしかけるというイジメを受けている者もいる。隊長は新入りは打たない。棒をひっぱって転ばせるだけだ。そして怒鳴っている。
「オラ援護しろ! なんで一人で放っとくんだバッキャロー!」
そりゃ放っとくよな。だってイジメが目的でやってるんだもん。知らないわけでもあるまいに、愚問だぜ。大抵の新人は度胸だめしに一回打ちかかるだけで勘弁してもらっていたが、ちん什長のところの新人が二回目を一人で行かされていて、隊長が激怒した。
「なってねえ! 陳什長以下十一名、甲冑帯刀で営庭二十周、全速力!」
うわキッツ~。
 命じるだけ命じておいて、陳什長らには目もくれず散兵戦を続けている。と思っていたら、目もくれずに格闘しながらも時々
「遅え! それが全速力か!」
と怒鳴ったりしている。鬼、そして超能力。
「遅え遅え! とっとと走れバッキャロー!」
最後尾に向かって石を投げつける。怖すぎだ。隊長のことだからきっとギリギリ当たらないところを狙っているのだろうが、最後尾を走っている新人は隊長の投擲とうてき技術の程を知らないから生きた心地がしないだろう。陳什長らは恐れをなして必死で速度を速める。と、新人がどんどん引き離されていく。



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