十五、おかしな仲間たち(2)

「まあどうぞお楽に。なんか甘いもんでも食べる?」
「実は手擀麺ショウガンメンを食べて頂きたいんですけど。」
ずっしりと重そうな包みをぶら下げた奴が割り込んだ。
「おっ、生地持って来た? ギャハハハ、用意がいいな。ワ~イ、やったー! 手擀麺ショウガンメン~!」
子供のようにはしゃぎながら生地を延ばす台を用意し、ウキウキと湯を沸かす。生地を持って来た奴は職人のように真摯な姿勢で麺棒を繰る。鮮やかな手つきだ。なんなんだ、こいつら。ここは軍隊じゃねえのか? 隊長は子供のように興味深げに麺作りを眺めながら感嘆の声をあげた。
「上手いもんだなあ。」
「なに言ってんスか。」
麺打ち職人が笑う。そりゃそうだろう。たぶんコイツは隊長の麺作りの弟子だ。隊長が小洒落た野郎に訊ねる。
「いっつも作ってもらってんの?」
「もう食い飽きましたよ~。」
「羨ましいなあ。」
部曲督ぶきょくとくってどんなんなんですか?」
「え、超ヒマ。今もなんもしねえでボケ~っとお茶飲んで怠けてたら、そこの優秀な勤務兵に書類とか溜まってないんですかっていぶかしげに訊ねられた。」
「ねえ、優しく什長のお世話してくれてる?」
えつの奴、コイツはもう什長じゃねえっつの。
「そんな、優しさとか求めてるんですか?」
「ギャハハハ、うっとうしいぜ。」
「この人の動く速度について行くのは困難なのではないかな。」
さっきからニコリともせず超然と様子を眺めていたのっぽが突然しゃべった。
「そうそう。そうなんだよ。」
若そうなわりにはジジイっぽいたたずまいをしているのっぽとタメぐちでいいのか敬語で話すべきなのか迷う。さっき「はじめましてでございます」と言っていたソワソワした野郎は、ソワソワしているわりには物おじせず隊長ににじり寄って
「お噂はかねがねうかがっておりますです。」
と言った。「ますです」って、語尾おかしいだろ。隊長はニコニコといい人っぽく笑いながらひがんだ発言をした。
「どんな噂? ろくすっぽ仕事もしねえでいっつもゲテモノ料理ばっか作って遊んでたって?」
「働き者じゃないですか。」
叔父さんだけが常識人っぽい。
「そっか。働き過ぎて営内で行き倒れになってよう什長に救助されたって話かな?」
「あっ、もう! せっかく誰にも話さずにいてあげたのに、なんで自分でしゃべっちゃうんですか!」
「ひゃっひゃっひゃっ。しゃべったところで誰も真に受けてくんねえ。あの日、とう従事じゅうじにありのままを話したら冗談だと思って笑ってただろ? で、あんた董さんのことを人でなしだっつってたっけ。あれは愉快だった。」
「不愉快です。」
「茹でますよ。よろしいですか?」
「はい、お願い致します。」
瞳を輝かせて鍋を見守っている。隊長が料理好きなのは知っていたが、作ってもらうのはもっと好きなのかもしれない。



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