十五、おかしな仲間たち(5)

なんとなくオドオドした家無し犬のような風情の奴が、麺を一気にすすりすぎてむせている。みんなに
「落ち着いて食えよ。」
「まったくよお。」
と口々に非難される。まあ愛情のあるツッコミかと思うが。咳が治まった頃に隊長が横に行ってぐるりと肩に腕を回してそいつをゆらゆらと揺らしながら
「どうなの? 毎日楽しくやってる?」
と聞いていると、季越きえつ
「あっ、ズルい。俺も。」
と間に割り込んだ。のっぽが真面目くさった顔のまま妙な提案をした。
「久々にあれをやったらどうですか。愛の抱擁のお時間を。」
「ゲッ。……まあいいけどよ。」
みんな即座に隊長の前に列を作る。何が始まるんだ? と訝しんでいると、隊長がかつての部下を一人ずつ順番に抱擁するという儀式が始まった。なんだこりゃ。まあ、みんな家族を離れて野郎ばっかの中で殺し合いを生業なりわいとして暮らしているんだから人肌恋しいって気持ちも分からなくはないが。
 最初に並んだ奴から順に一人一人抱擁していく。最後に並んだのっぽだけ、なぜかみんなより長く離されずにいる。
「……長い。」
のっぽが疑義をはさんだ。
「長いですよ。好きなんですか。」
「ギャハハハ、そのせりふ、懐かしいな。それをもう一回聞きたくてやった。」
のっぽを突き放しながら
「だから前にも言ったじゃん。俺お前のこと大好き。変な意味じゃなく。いつ何を言い出すんだろうっていっつもドキドキしちゃう。ほんと面白え。」
こう言って満足げに笑った。

 愉快な仲間達も満足そうに笑顔で帰って行った。俺は何もせずに傍で見ていただけなのに、げっそりと疲れてしまった。何かが吸い取られたか、すり減ったかした感じだ。毒気に当てられたのだろうか。
 隊長のことをおかしな野郎だと思っていたが、隊長のもと部下もおかしな野郎ばかりだった。そもそも、隊長は自由人なんだ。だから、部下たちも甘やかして自由気ままにさせていたのだろう。あの人らにとっては、これが普通なのかもしれない。
 うちの部曲の前任の隊長は、それはそれは立派な方だったんだ。俺はちょう隊長のことしか知らなかったからそれが普通だと思っていたが、そうではなかった。趙隊長は素晴らしい方だった。どこへ出しても恥ずかしくない人だった。ちょっとできすぎだったのかもしれない。どんなのが普通なのか、分からなくなってしまった。



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