十六、定軍山の十一日間(2)

 定軍山の戦いは、建安けんあん二十四年に曹操そうそう軍と我が軍との間で行われた。当時、曹操が漢中かんちゅう一帯を支配しており、そこを我らが先帝、当時の劉皇叔が攻め取りに来た際の戦いの一つだ。曹操軍の名将夏侯淵かこうえんと我らが劉皇叔りゅうこうしゅくとがおのおの定軍山に陣取り激しい攻防の末、我らが名将黄忠こうちゅう将軍が夏侯淵を討ち取ったという。
 今回、隊長と黄屯長が企画している「定軍山の戦いごっこ」とは、その歴史上の定軍山の戦いを模して遊ぼうというものらしい。俺達の部隊を曹操軍と皇叔こうしゅく軍とに分ける。曹操軍の大将は夏侯淵役の宋屯長、皇叔軍の大将は黄忠将軍役の黄屯長。副将として曹操軍には張郃ちょうこう役の張屯長、夏侯栄役の韓隊長。皇叔軍には先帝役の劉屯長、陳式将軍役の陳屯長。基本は苗字つながりの配役だが、夏侯という苗字の士官がいないので、そこはテキトーだ。
 屯長達を召集して計画を伝える。みなさんノリノリで、おのおの夏侯尚かこうしょうとか杜襲としゅうとか勝手に役割を決める。苗字つながりで自動的に割り振られた各位も異存はないようだ。ルンルンと定軍山に向かう。隊長はみんなを先に進ませておいて、自分は将軍に演習の計画を伝えに戻り、許可を得てみんなに追いついたと思うと、こんどはみんなを追い越して先に定軍山に向かい、近隣の住民の理解をとりつけてまた俺達のところに帰って来た。せかせかした野郎だ。
 ここに定軍山の戦いごっこの主な配役をまとめておこう。

【守備側:曹操軍(魏)】
  夏侯淵……宋屯長
  張郃……張屯長
  夏侯栄……隊長(韓英)

【攻撃側:皇叔軍】
  先帝(劉備、劉皇叔)……劉屯長
  黄忠将軍……黄屯長
  陳式将軍……陳屯長
  雑兵一……俺(季寧)

……馬鹿くせえ。



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