十七、初めての拉麺(11)

「隊長、もしかして丞相の手先だって思われて、ここのみなさんから敵視されてるから友達できないんですか? っていうか丞相が将軍への嫌がらせのために自分の子分をここに送り込んだっていうことなんですか?」
「ギャハハハ、考えすぎ。べつに丞相の子分じゃねえし。丞相と将軍も敵対関係じゃないじゃん。」
「敵対関係ですよ。だって丞相って何かにつけて『魏延ぎえんには反骨はんこつそうがある』なんてけちつけて将軍のことこけにしてるじゃないですか。」
「ほんと不器用な人だよな。内心で『反骨の相がある』って疑ってたとしても、そんなこと口に出さずニコニコして機嫌とっといてくれりゃあいいのによ。そんなこと言われて喜ぶ奴なんかいねえのに、言っちまってなんになるんだろうな。馬鹿かよ。」
馬鹿のくせに、丞相のようなお利口な人のことを馬鹿と呼ぶ。
「ま、いろいろ考えすぎ。俺がここにいるのは単純にちょう隊長の後任がなかなか決まらなくて他に適当な人がいなかっただけだし、俺に友達ができないのは俺がろくでもない奴だからです。」
「そうだと言われればそれなりに納得しますけど。」
「そうなんだよ。他には何もなし。物事は単純に考えるのが一番です。」
「生地、こんなもんでいいんですかね。すごいスベスベしてます。」
「どれ。うん、きれいにできたな。じゃあ、これ半時くらい寝かせたら食べ頃になるから、その間に腹ごなしにちょびっとお使い行って来て。えっとね、これを孫令史そんれいしに、これとこれを張主簿ちょうしゅぼに持ってって下さい。んで、終わったら叔遜しゅくそん呼んで来いよ。俺つゆ作っとく。」
「わ~い、ヤッター、拉麺~!」
「いや、その前にお使いですって。」
「あ、そうでした。行ってきま~す。」
「よろしく。」
隊長の拉麺にありつくの、初めてだ。ルンルン。

 お使いを早く終わらせたって半時待たないと拉麺にありつけないわけだが、脱兎のような素早さでお使いを済ませ、叔遜を呼びに行く。
「なんかさあ、生地捏ね終わって半時くらい経ったら食べ頃らしいけど、まだ明らかに半時経ってねえと思う。」
「隊長、つゆ作るって言ってた?」
「うん。」
「じゃ、もう行こうぜ。つゆ作ってる旨そうな匂い嗅ぎながら横で物欲しげに待ってよう。」
「それ、なんかイヤミ言われそうで嫌だなあ。」
「俺なにげに楽しみなんだけど。隊長がどんなイヤミ言うのかなぁって。いっつもよくすらすらと出て来るよなあ。」



《広告》
ページ公開日: 最終更新日: