十八、桃姚路(とうようろ)(7)

 そろそろ就寝かなあという頃になって、張屯長が本日の不始末を詫びに来た。隊長は
「まあ何事も経験じゃん?」
とへらへらと笑う。
「どうして迷子になったんだろうな。」
「このあたりは小さな山が続いているもんですから、似たような場所が多くて。」
「そうだね。明日はどう進む?」
「そうですね……道をたどろうと思わずに、まっしぐらに北を目指そうと思いますが。」
「うん。どうやって?」
「あした日が昇ったらどちらが東か分かりますから、日が高くならないうちに一気に進みます。」
「なるほど。じゃ明日は早起きするのかな?」
「そうですね、はい。そうします。」
「じゃお任せしますんで。よろしくお願いします。」
「はい。」
表情が硬いとでも思ったのだろうか。隊長は張屯長の頬に両手を当ててごしごしともみほぐし始めた。
「明日は楽しいお花見だぞ~。嬉しくねえの?」
「でも迷子ですよ。」
「大丈夫大丈夫、お腹いっぱいになってぐっすり寝れば、明日はきっといい日だよ。」
こう言って張屯長を抱擁する。まるで小さな子供を慰める時のようなやり方だ。

 次の日は、夜明け前に起床して、日の出とともに行動を開始した。この山脈は東西に長いから、うまく真北を目指したらあっという間に山を下りてしまうんじゃなかろうか。隊長はまだ
「ウズラいねえかな~。」
とキョロキョロしている。そして時々
「あっ、モグラの穴だ。」
とか
「熊の足跡じゃねえ?」
とか騒いでいる。
「モグラや熊まで食うんですか?」
「熊は食ったことあるけど、モグラはねえなあ。生け捕りにできねえし、捕ったところで食うとこあんまなさそうだな。」
「じゃあなんでモグラの穴みつけて喜んだんですか?」
「え、いや、特に理由はないけど、なんか好きなんだよ、モグラの穴。かわいいじゃん。モグラがここからぴょこっと顔出して、おっといけねえ土から出ちまったっつって慌てて戻ってったかと思うとよ。」
「へえ。食べ物以外にも関心あったんですね。」
「おれ動物好きだ。」
ふうん。好きなのに、捕って食っちまうのか。まあ、誰でも多かれ少なかれそんなもんなのかもしれない。



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