二、城壁にて(12)

「おれ無理っぽいことをおとなしくやめるっていう習慣ないんだ。冒険に付き合わされる奴は災難だけどな。公惟どうする? 俺に命預けちゃう?」
ボソボソと答える公惟。
「考え直せ!」
宋什長が叫んだのと、隊長が
「じゃ決まり。おんぶ作戦始動ー。」
と言うのと、ほぼ同時だった。
 宋什長が不安げに見守る中、隊長は城壁の上から投げ下ろさせた縄をウキウキと公惟の体に巻きつけている。公惟の奴、どうしておとなしくなすがままになっているんだろうな。きっと疲れすぎて冷静な判断能力を失っているんだろう。隊長はにこやかに城壁の上に指示を出した。
「じゃこれから登るから。かまどに火入れて待ってろよ。」
ヤッター、と炊事当番が竈に向かって走る。隊長は公惟を背負って立ちあがると、さっそくよろめく。
「うわ重っ。こりゃ無謀だな~。人間のやるこっちゃねえなあ。」
「おとなしくやめときましょうって。」
「へっへっへ。オエ~、重てえ。死ぬ。無謀なり韓英。愚かなり韓英。あ~面白え。たまんねえ。」
一人でブツブツとしゃべりながら、満面の笑みを浮かべながら、隊長がスルスルと縄をつかんで登って来る。案外余裕なんじゃないだろうか。
「何が面白いんですか……。」
「一人だったらそうそう死なねえがよ、二人つながったまんまじゃあ変な落ち方しちまうな。なんて危ねえことをしてやがるんだ俺。あきれるぜ。若っけえ奴を巻きこんで可哀相によ。クックック、ウケる。ああダメだ、自分の馬鹿さ加減に笑っちまう。ははははは。」
「そんな笑いながらよく登れますね。」
宋什長が呆れながら見上げている。
 残り一丈足らずのところで、突如隊長に異変が現れた。
「ああもう握力ねえ。目の前まっ暗。墜ちるぞ。無謀な訓練により二名墜落死。」
「ええっ!」
公惟が突然正気に戻って叫んだ。
「ごめんなあ。まあ今日の様子ならお前どうせ実戦でも死ぬよ。いま俺が一緒に死んでやるから感謝しろ。」
「いや、ちょっと、無理なんだったら引き返して下さいよ!」
「引き返しちまってもう一回登んのもかったりいしなあ。いいじゃん、一緒に死のうぜ。」



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