二十、お山の鳥の声(11)

「なんの話を始めるんですか?」
「女子供と年寄りばっかじゃなかった?」
「まあしかたないですよ。戦争やってんですから。」
「お前くらいの年のやつはまだいいけどな。いま十歳くらいのチビっ子は可哀相だよ。お前の甥御さんくらいの世代か。物心ついた頃から女子供と年寄りばっかの中にいて、ちょっと棒きれでも振り回して遊ぼうものなら血相かえて『危ないからやめなさい』って叱られながら育ってるよな。でも男の子の健全な成長のためにはそんな遊びも必要だよ。そんなことは男なら誰だって知ってるけどな。男という男がみんな軍隊に取られてるようでは男児は育たないね。女の人が気を回していろいろ言ってくれるのをハイってお利口に聞くことしか知らないまんま成人したら、人の言うこと聞くしか能がねえような、変に内に籠ったような奴ばっかになっちまうんじゃねえの。いま十歳の子たちが十五歳になるまでに街に男を返せなかったら、この国はもうおしまいだ。」
「なに過激なこと言ってんですか?」
「だからさ、好機到来と思ったら強引に出兵しなきゃだめってこと。半年分の麦を損なってでもね。なにせ期限は五年しかないんだから。」
「それ、丞相の考えなんですか?」
「丞相も五年っつってたな。だから俺、寿命はあと五年しかねえもんだと思ってせかせかやってるんだ。」
「まさか自分らにもそういう気持ちでせっせと働けって言いたいわけじゃないでしょうね?」
「もし上から下まで全員がそういう気持ちでやってくとしたら、我が軍はさぞ鬼気迫ったものになるだろうな。でもそんな組織ありえねえだろ。みんなそれぞれ自分の思惑にそって好きなようにやってりゃいいんじゃねえ?」
「じゃあなんのために寿命はあと五年だなんて話をしたんですか?」
「丞相のことを農家の辛苦に無理解でむやみに出兵を繰り返してる唐変木とうへんぼくだと思って怨んでほしくなかった。」
「どんだけ丞相好きなんですか。」
「嫌いだよ、あんな変な奴。」
「でも超尊敬してるじゃないですか。」
「丞相は真面目で公平無私で働き者だ。あの人のことを尊敬しない人間なんているのか?」
真面目で公平無私で働き者? そんなの隊長だってそうじゃないか。だからといって俺が隊長を尊敬するとは限らない。



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