二十一、血盟(2)

「えっ、まさか早速料理するんですか? いくらでもやることあるでしょう? っていうか勤務兵の引き継ぎは?」
「おっとそうだった。それ一番重要じゃん。」
「一番ってこともないでしょう。」
俺のツッコミをよそに、横にひかえている李幼信りようしんに満面の笑みで歩み寄って 「一ヶ月間公私に渡り大変お世話になりました。ありがとうございました。またよろしく!」
と言いながら抱擁を加える。幼信ようしんは照れくさそうになすがままになっている。なんなんだこいつら。あやしい。公私に渡りってどういうことだ? まさかデキてるんじゃあるまいな。オエ。
「公私に渡りってどういう意味ですか? まさか恋仲なんじゃないでしょうね。」
疑念をそのまま口にする。
「いや。幼信すげえ虫捕り名人なんだよ。夜寝る前に、あの木にはカブトムシが来そうですねえ、とか言ってるから翌朝見てみたら、ほんとにいるんだよ。おかげでけっこういっぱい捕ったなあ。」
「そんなもん捕ってどうするんですか?」
「力比べさせたり、棒のぼり競争させたり、でっけえの捕れたら見せびらかして自慢したり。可哀相だからすぐ逃がすけど。」
「そんなの何が面白いんですか?」
「え~、愚問!」
「理屈じゃねえよなあ。」
二人して俺を非難がましく見る。なんなんだ。
「食べ物以外にも関心あったんだなっていうのが、最近の意外な発見の一つなんですけど。」
「そりゃあ人並みにいろいろ興味あることあるよ。陶芸とか。」
「ゲッ、地味。ジジイみてえ。五歳なのか五十五歳なのか、どっちなんですか?」
「何に興味もってりゃ年相応なんだ? 人妻とか?」
「エ~、そういう好奇心の持ち方は、むしろ十五歳なんじゃないんですかあ?」
「で結局お前は俺のこといくつだと思ってるんだ?」
「年齢不詳なんですよ。五百歳だと言われればそうなのかもなっていう気もしますし。」
「ほお。よく見抜いたな。じつは当たらずとも遠からずだ。俺は今を去ること四百五十年前に始皇帝暗殺に失敗して処刑され、死に切れずに今までさまよっている僵屍キョンシーなんだ。だから俺が不死身の僵屍キョンシー戦士だっていう噂は本当だけど、丞相の妖術で蘇ったっていうくだりは事実じゃないな。っていうのは全て嘘。決して信じるなよ。」
「ふざけすぎです。」
幼信は隊長付当番に就く時は不安げにしていたが、虫捕りを通じてすっかり意気投合したらしい。楽しく当番を務めたようでなによりだ。



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