二十四、賞月(4)

「さて、さっそく探し物に取りかかろう。めでたく発見され次第、お月見開始ね。宝を探しだした人へのご褒美は、この時価六百銭の銘酒です。二十年もの。」
「酒が好きでもないのにすごいもの持ってるんですね。」
「勤続二十年の記念品だよ。ケッ。俺が兵隊狩りにとっ捕まったあの時分に醸造された酒かよ、って思うと憎たらしいばっかだな。」
「えっ、二十年? 計算おかしくないですか?」
「計算はおかしくない。おかしいのは徴兵した野郎の頭だ。」
「隊長、何歳ですか?」
「三十四。」
「その徴兵、違法じゃないですか。」
「そうだよ。当時はそういう員数合わせがまかり通ってたってこと。そんなのキチッとやるようになったのはここ十年くらいのことじゃねえ? 丞相閣下のご威光で。ギャハハハハ。」
「隊長と同期のお酒ですか……。」
「まあ酒には罪はねえよ。禁酒令時代を生き延びた銘牌だ。二十年ものならさぞかし気持ち良い味わいだろうぜ。お上が偽物を掴まされていなけりゃな。ギャハハハハ。」
大爆笑していると思ったら、ふと表情をひきしめた。
「でよお、帯刀して行っちゃったみたいだから、刺激しないようにな。せっぱつまって早まったことしたら可哀相だ。」

 屯ごとに分かれて要所や山林を探す。二人が考えもなしに脱走したのだとしたら漢坪村にいる可能性が高いが、刺激しないために村には捜索の手を伸ばさない。南湖には、隊長と、俺を含めた王什長以下十一名だけが待機している。隊長が酒の壺を弄びながら
「こっそりちょびっと飲んじゃおうか。」
とふざけたことを言う。
「飲みたいんだったら賞品なんかにしなければよかったじゃないですか。べつに賞品がなくてもみんな一生懸命探しますよ。」
「そういう趣旨じゃないんだ。見つかってよかったね、ってめでたい酒が飲めたらいいと思わねえ? 月もいいしな。」
「もし月が沈むまでに見つからなかったらどうするんですか?」
「え~? 俺いかってこの酒壺叩き割ってやろうかな。バッキャローてめえら五百二人もいてどうしてたった二人ぽっちの人間を見つけ出せねえんだ、って。」
そういえば、今日も脱走した二名を除く全員が演習に参加している。ふつうこれだけの人数がいれば、誰かしら腹が痛いとか熱があるとか言いだすものだが、うちの部隊は隊長が替わって以来全員参加の日が異常に多い。隊長が掃除や生活態度について異常に細かいから病気が流行る隙がなく、毎日あれこれ振り回されるからみんな今日もよくがんばったと思いながら就寝して今日はどんな冒険があるのかなと思いながら健やかに起床する。まあ、今宵は翌日に控えた冒険がおっかなすぎて逃げちまったやつが二人いるわけだが。



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