二十五、鏡(11)

「勝っても負けても結局飲むんじゃないですか。」
みんなどっと笑う。
「だからさあ、引き分けが一番つまんねえんだよ。一杯しか貰えねえからな。どっちが勝つか負けるか命懸けで勝負をつけろっていう教えだったな。」
「あれはほんとにひどい上官だった。訓練で人命を失うことなんてほんとなんとも思ってなかったな。」
「それ張車騎のことですか?」
「そ。張車騎の伝説で、部下の兵士に力比べをさせてそれを肴に酒飲んでたっていう話があんじゃん?」
「じゃあ鍾師範は張車騎の親衛隊にいらした時の戦友なんですか?」
「そ。」
「隊長が馬鞍山ばあんざんからの唯一の生還者だっていう噂は嘘だったんですね。」
今まで誰もが不気味すぎて聞けなかったことをとうとう王仲純が質問した。鍾師範が当惑げに答えた。
「おれ馬鞍山には行ってないから。」
「その噂おれ事実じゃないと思ってんだけど。普通に考えて、一人だけ残すっていうのは皆殺しより難しそうじゃねえ? 一人残そうと思ったら五、六人はちらほら残っちゃいそうじゃん?」
「実際どうだったんだよ。」
「さあ。何がどうなってんだか分かんなかったもん。ところでほんとに一杯やってく? 罰杯。」
「へっへっへ、遠慮なく。お前あれ持ってんだろ、二十年もの。」
「ああ悪い。あれ人にやっちまった。」
「しまった~。遅かったか。」
「葡萄酒があるよ。北伐の戦利品。」
「何斗あんの?」
「二斗。」
「蛇の生殺しじゃねえかよ。」
「葡萄酒で下地作っといてあれこれ混ぜこぜで飲みゃあいいじゃん。酔ってくればどうせなに飲んでも分かんねえだろ。」
「俺そういう節操のないの嫌いなんだよ。」
「弱いくせに贅沢な奴だなあ。」
二人で葡萄酒二斗では蛇の生殺しだなんて言ってる人を酒に弱いなんて言うのか。バケモノだ。ちなみに俺達の言う酒一斗は重量でいえば生まれたての赤ん坊よりも若干軽いくらいの量だ。って、分かりづらいか。



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