二十六、遊び(5)

「ちょっと! なるほど、じゃないですよ! もし訓練でそんなことやらされたら、反乱起こしてやる!」
仲純が呑気に笑う。
「反乱起こしたってすぐ鎮圧されんじゃねえ? 隊長一人で。」
子儀は眉間に皺を寄せながら俺に言う。
「訓練で甘いことやってると本番でひどい目に遭うだけだ。みんながちゃんとしてなきゃ俺の命だってないんだからな。」
ふうん。命かかってると思いながら軍刀術の指導係やってるわけだ。だからビシバシやってんだな。
「じゃまず、実戦経験の不足ね。他には?」
「みんな、非力すぎますね。型だけ覚えても使い物になりませんよ。基本的に力でぶっとばす剣術じゃないですか。非力な連中には向かない。」
「なるほど。体力不足ね。他には?」
「他には……。」
子儀は考え込んで押し黙る。
「いや、具体的にはいま言った二点だけですね。他にさしあたって思いつく点はないです。」
「ふうん、二点ね。分かった。ありがとう。」
隊長は子儀の二の腕をぱんぱんと叩いてニコッと笑った。

 隊長の野郎、……なんで子儀の言うことに納得して笑って帰ってきやがった。まさか真剣で訓練させるなんて言いだすんじゃあるまいな。危険すぎる。絶対にやめて欲しいが、面と向かってそう言うと、逆に刺激してその気にさせてしまうかもしれない。ここは運を天にまかせて小心翼翼としているしか……と思っていたら、仲純が瞳をキラキラと輝かせながら
「隊長、訓練でも真剣使うようにするんですか?」
と訊ねた。馬鹿野郎! どこまで馬鹿なんだ、仲純! 隊長はへらへらと笑った。
「いや。真剣か木刀かって問題じゃないな。木刀だって人を殺すぐらいの破壊力は充分あるし。」
「チェ~、なあんだ。つまんねえなあ。」
「そんなに血を見たいかよ。」
「木刀で流血させる方法なんてあるんですか?」
「骨のないとこを勢いつけて力一杯突けば大抵通るよ。筋肉の鎧をまとってるような奴には何かほのぼのとした話題でほっこりさせて身体が弛緩した瞬間にやる。」
「…………。」
そうだよ仲純、コイツは愉快にちゃんばらやって遊んでくれるお兄ちゃんじゃないんだ。本物の人殺しだぞ。



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