二十六、遊び(9)

「なんか、子儀が自分らのことを非力だとかなんだとか言って馬鹿にしてたじゃないですか。だからてっきりビシバシ鍛え直されるものだろうと思ってたのに、毎日遊ばせるってどういうことですか? もしや鍛えるのを諦めたんですか?」
「いや。そんなに非力でもないと思うけどな。」
「でもこのあいだ隊長がこっちの構えている棒を思い切り叩いたら、自分腰が砕けたじゃないですか。」
「もっかいやってみる?」
「え~、イヤですよ。だってあれ痛ってえんだもん。」
「まあそう言わず付きあって下さい。」
ぽんぽんと俺の肩を叩いてさっさと部屋を出て行く。思いついてから体が動き出すまでの時間が異常に短い。

 外に出て、俺に棒を手渡す。
「じゃあこれ持って、こっちを軽く叩いてみ。」
「はい。」
隊長の構える棒をふつうにスコンと叩く。
「もうちょいこうだな。」
背中の向きと肩を少し直して、俺の構えている棒を手で押した。
「うん、いいね。」
ニコッと笑ったかと思うと、突然恐ろしい顔で俺の構えた棒を自分の棒でガン、と打った。
「痛って~!」
ビ~ン。手が痛いっす。腕とか肩とか腰とか、全部痛えじゃん。
案の定だよ。俺は涙目になりながら
「案の定じゃないですか!」
と文句を言った。隊長はニヤリと笑った。
「上出来だ。」
「はあ? どこがですかあ?」
首とか頭まで痛えんだけど。
「このあいだはおまえ腰が砕けてたじゃん?」
「あれっ? ああ、そうですね。確かに。それは隊長、今日ちょっと手を抜いて打ったんじゃないんですかあ?」
「へえ、そう思うんだ。ま、いいけどさ。俺は成果に満足してるよ。」
成果だと? そんな、まさか。一カ月やそこら遊んで過ごしただけで、そんな目覚ましく筋力付いたりするわけねえじゃん。なんの魔法だよ。催眠術かな。
 まあ、催眠術でもなんでも、とにかく兵隊をよく働かせることができさえすればいいんだろうけど。満足げに笑いやがって。なんなんだこいつ。なんか、……なんか気色悪い。



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