二十七、徙民考(しみんこう)(2)

「え~、臘日を独りで過ごすのが寂しいってだけの理由で大急ぎで生涯の伴侶を決めるわけエ?」
「結婚は勢いが大事だっていいますよね。」
「そうだな。季寧この休みの間に決めてこいよ。ちょうどいい年頃じゃん?」
「はあ? いま自分の話なんかしてませんよ。」
「お兄さんに手紙書いとこう。」
「いや、やめて下さいよ。なに早速さっそくってんですか。」
「あっ、この野郎、急に引っ張んなよな~。墨がビーってなっちゃったじゃんよお。」
「いいですよ。これ焼却。」
「結婚なんかさあ、若くて力も判断力もないうちに周りの大人の言うこと聞いてさっと決めとかないといつまでも決まんないぜ。なまじ分別ついてくると、なんか縁談あっても、あいつがしゅうとかよ、気に入らねえ、なんて思っちゃう。」
「もしや隊長そういう理由で婚期逃してんですか?」
「えっ、おれ婚期逃してるかな?」
「は? 自覚ないんですか? ちょっと! マズいですよ! いつまでも若いつもりでいたらあっという間に年寄りですよ!」
「ギャハハハ。若いつもり、か。いい言葉だな。」
「喜んでる場合ですか。」
「季寧は若気わかげの至りでカラダ目当てみたいな勢いでさっさと決めちゃえよ。巧遅こうち拙速せっそくかずだ。」
「なんかいろいろ失礼だな。その言葉そっくり隊長にお返ししますよ。」
「いやあ、俺っちそんなに若くないからさあ。」
「臘日に行くとこないなんてろくでもない人生じゃないですか。さっさとなんとかしないとだめですよ。」
「グサッと言ったねえ。」
ちょっと言い過ぎたかな? ま、いっか。

 休みの割り当てが決まればもう帰心きしん矢の如しだ。相変わらず訓練は毎日バッチリ行われているが、臘日の数日前からは食事がなんとなく豪華だったり隊長が余暇に羊を丸焼きにしてみんなに配ってくれたりと、ちょっとずつお祭り気分が盛り上がってくる。通常の訓練は臘日の二日前までだ。前日の午前中に太鼓を打ちならして鬼やらいをするのが仕事納めで、午後にはおのおの魔除けのおふだを分けてもらって家に帰る。
 さて、鬼やらいが恙無つつがなく終了し、ルンルンと荷物をまとめ、隊長に一言挨拶しとこうと思って隊長室を覗いてみると、隊長は李隊長と仲良くお菓子を食べながらお茶を飲んでいた。



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