二十八、音響兵器(4)

「ぽんぽんで目一杯ためた空気がどこにも邪魔されずに狙った場所に発射されてるか意識しろよ。どっかに無駄に当たって勁が逃げてると思ったら、自分で喉の開き具合とか立ち方とか調整して。じゃもっかい。はい吸って~、もっと吸って~、もおっと吸って~、はい、あ~!」
あ~!
 なんかこれ、楽しいな。一斉練習の後、十一人ずつ声を出させてみんなで評価するという練習をして、午前中いっぱい声出しの練習をした。ところでこれ、なんのための練習なんだ? 休憩時間中にもおのおの勝手に大声を出して遊んでいる部下たちを眺めながらニヤニヤしている隊長に、素朴な疑問を投げかけてみる。
「あのお、大声を出すのは楽しいんですけどお、これってなんか戦争に役立つんですかね?」
「役立つよ。当たり前じゃん。」
「まさか張車騎みたいに発勁術はっけいじゅつで敵に触れずに倒せっていうんじゃないでしょうね。」
「いや、そこまで直接的な効果は望んでない。騒音だけで人間が死ぬことってあるのかな?」
「え、さあ。隊長、そういう軍事技術について聞いたことないんですか?」
「聞いたことねえな。もし万が一そういう騒音を発する装置なんか開発されたら恐ろしいな。」
「誰か研究してる人はいそうですよね。」
「おおコワ。」
おおコワ、って、なんだよ。あんたは コロしの職人なんじゃねえのか。

 午後には部隊を二つに分け、隊列を組んで真正面からまともに斬り合いをする練習をした。こういう訓練はふだんからちょくちょくやるのだが、今日はふだんと違い、自分が敵と斬り合いを始める番になったら先刻練習をした大声をあげながら戦い始めるよう言われた。ふうん。ま、いいけどさ。
 俺の屯は後ろの方だ。っていうのは何故かというと、うちの屯長である陳屯長が、隊長の身に万が一のことがあった際に隊長の代わりを務める係だから、最後尾にいる隊長の近くに陳屯長がいたほうが都合がいいという理由で、うちの屯が後ろの方に配置されるわけだ。
 というわけで、後ろの方から、前の連中が斬り合いをしている様を眺める。なんか、いちいちうるせえ。ウゼえ。俺ら、ウゼえ。馬鹿みてえ。もし敵兵が今の俺達のような部隊に遭遇したら、ぜったい気が萎えるだろう。ああうるせえ。自分の番が回って来た時に大声出せって言われただけなのに、なんか、交代の時だけじゃなくて斬り合いの最中にも大声出してる奴いるし。ま、大声出してる方は気持ちがいいからな。斬り合い中によく言う「死ね!」とかいう怒号も、なんか、大声出し慣れたせいかいつもよりでけえ声じゃん。怖いんだけど。



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