三、おもてなし(7)

「うわヤッター!」
「浮かれてないでお勧めしろって。」
「はい。じゃどうぞ。乾杯!」
「乾杯! ――。」
うわ旨んまっ! なにこれ。蜂蜜みたい。って、たとえが分かりづらいか。すげえいい香りするんだけど。鼻とか喉とか、全部持ってかれる。俺の表情を見て、仲毅が「な、だろ?」とでも言うような視線を送って来る。
「ハァ~。」
あ、溜息ついちゃった。
仲毅ちゅうき飛ばし過ぎだけど、俺がもっと飲みたいからもっかい乾杯して。乾杯!」
「乾! ――。」
いちいち旨そうな顔しやがって。俺は二杯目だけど仲毅これまで何杯飲んだんだ?
「けっこうな勢いで飲んでるけど大丈夫? 強いの?」
ちなみに、仲毅は俺より二年先輩だが、うちの部隊は同郷で編成されていることもあって、年次による上下関係はさほど厳しくないからタメぐちだ。タメ口のなかにも一応微妙な遠慮はあるけど。
「え、いや俺あんま酒って飲んだことない。」
「えー、それ危険。隊長に一言いっとけば?」
「いいよ、旨いし。楽しいし。」
「でも明日がさあ。」
「だって旨いよ。一生分飲んどこう。」
「っつうかまかり間違うと今宵が一生の最期の晩となるよ。」
「不吉なこと言うなよ、こんな楽しい夕べに。」
「おい季寧、ちゃんとお勧めしてんのか?」
言いながら隊長が俺の前に膳をしつらえてくれた。感動だ。俺はちゃんと膳に乗った食べ物を食べるなどということは生まれて初めてだ。まるで昔の壁画に出て来る貴族の宴のようではないか。夢のようだ。
「じゃあ君にも一献差し上げましょう。燕のおいしいお酒と調理技術の精華せいかよみして、乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯! ――。」
「隊長、言葉遣いが難しいですよ。」
えん料理を褒めたんだ。」
「隊長って燕の人なんですか?」
「いや、おれ河内かだい出身だ。」
「チャキチャキの鄂北がっぽく弁ですけど?」
「育ちは襄陽じょうよう。」
「えー、なんか頭よさそう。」
「ギャハハハ、マジか。」



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