三十四、最強戦士(7)

 翌朝、隊長は何事もなかったかのようににこやかに朝礼台に立っている。見慣れた光景だが感慨深い。
「ご迷惑ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」
さして重大そうでもなく、さりとて不真面目なわけでもなく、爽やかにみんなに謝りやがった。まったく、本当に人騒がせな野郎だな。
「でね、こういうことになるんなら立ち合いは危ないですよって言ってくれる人いたんだけど、それあんま気にしなくていいと思うんだ。苦しい! 死ぬ! って思ったことは今までもちょくちょくあったんだけど、べつにそれが原因で死んだことは一度もないからな。万一死んじゃったとしても、そんならそれが寿命だってことだよ。めでてえこっちゃねえか。ってことで、何事もなかったように今日から立ち合い再開しますけど、どうかなんにも気にしないで思う存分やってくれ。あいつ喘息持ちだからちょっと手加減してやろう、とか気を遣いながらやってもらってると、俺は使い物にならない奴みたいで悲しい。」
べつにそれで使い物にならないってこともないけどな。隊長の存在価値は暴力だけではあるまい。ふうん、悲しいかよ。やっかいな野郎だ。
 朝礼が終わって、何事もなかったかのように生民体操、周先生の軍刀術、地獄のしごきの三組に分かれて課業開始する。立ち合いの連中は、隊長に手加減しようなんて思いもよらないほどの勢いで元気いっぱい叩きのめされている。ほんと生き地獄だ。
 そういえば、隊長が立ち合いの途中に喘息の発作をおこしたからと言って、そのために隊長を打ち負かすことができた奴はいないんだ。このあいだ幼珪が隊長を朦朧もうろう状態まで追い込んだ時も、隊長に近付くたびに痛めつけられていた。喘息の持病があるからといって、隊長が最強であることには変わりがない。



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