三十九、投壺と琴の宴(1)

 今日はそのまま外壩河がいはかで野営、演習場の片付けは明日するそうだ。晩飯は焼き肉大会。将軍から酒が配られ、敵方に遠慮しながらこっそりと勝利の祝宴を張る。ま、向こうは向こうで楽しくやってるんだろう。
 隊長は将校たちの宴会のほうに出席している。きっと「今日はありがとうございました」とでも言いながら誰かれ構わず酌をしまくってみなさんを酔い潰していることだろう。片手が不自由だから手伝いに同行しましょうかと聞いてみたが、手伝いが必要な時は李さんに頼んじゃうから大丈夫だよと言って一人で行った。そりゃまあ、李隊長は頼られれば喜んで手伝ってくれちゃうだろうけど、そのご厚意に甘えるのは危険なんじゃなかろうか。面白いから放っておこう。

 ワ~イ、焼き肉、焼き肉~。楽しいな~。お肉大好き。演習は、状況中は面倒くさいけど、前後なんかにちょこちょここういうお楽しみがあるから好きだ。俺がものも言わずにもりもり肉を食っている傍らで、勝ち戦に気をよくした戦友達が、自分達のヘナチョコさ加減を棚に上げて姜奉義の虎歩軍こほぐんを小馬鹿にして悦に入っている。
「だからさ、操戟術そうげきじゅつとか訓練とか、そんなの大して役に立たねんだよ。」
「どの程度場数を踏んでるのか知らねえけどよ。」
「奴らにも教えといてやらないとな。」
俺達だって場数なんか大して踏んでないじゃないか。胸を借りるどころか、教えてやるだと? 調子に乗り過ぎだ。馬鹿話している間に俺もっと肉食っちゃお~っと。
「あっ、テメ一人でどんだけ食ってんだよ!」
「あーっ、ひでえ!」
「お前、調達して来いよなあ。よそからかっぱらって来い!」
孫伍長の命令でよその什まで遠征に行く。と、劉什長が見咎みとがめて王什長に食ってかかった。
「オイ! どういう教育してんだよ!」
「季寧、もっとうまくやらなきゃだめじゃないか。」
「肉が欲しけりゃなんか芸しろよ。歌え!」
「え~、ヤダ。」
「じゃ王什長が俺と手勢令むしジャンケンして俺に勝ったら許してやるよ。」
「え~、王什長、手勢令むしジャンケン超弱いじゃないすか。」
「そんなことないぞ。よし、やろう。」
「あ~っ、だめー! あ~……あ~あ、ほら、負けちゃった。」
「ほら歌えよお、季寧~。」
「あ~あ。なんの歌がいいですかあ?」



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