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三国志小説 『ショッケンひにほゆ』 目次 ☆☆プロローグ☆☆ 一、焚火(たきび) 【バカ隊長の手料理に兵士504名殺到! 叫喚地獄!】 二、城壁にて 【夜明けのおんぶ作戦! これを登れねえ時は俺が死ぬ時だ!】 三、おもて …

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八十七、失敗作(1)

 俺は体に日課時限が刻み込まれた精鋭だ。通常、起床の太鼓が鳴る前に目を覚ますことはまずない。しかし今日は、何故だか早く目覚めてしまった。クソッ。  異常に損した気分で、隊長を探しに行く。きっとまた何かおいしいおめざでも作 …

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八十七、失敗作(2)

「知るかよ。火傷してねえ? 水で冷やしといたほうがいいぜ」 「手なんかどうでもいいですよ」 「どうでもいいわけあるかよ。馬鹿か」 「馬鹿に馬鹿って言われたくない。大丈夫ですか?」 「もう治まってきたぜ。ああ焦(あせ)った …

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八十七、失敗作(3)

「自由人のくせして時々変に自己流にお堅いから、本人が真面目なつもりでいるわりには周りにはちっとも伝わっていないという、こういうのを変人と呼ぶんだろうな」 「かなり正確に自己分析できてるんですね」 「自己分析できてても直す …

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八十七、失敗作(4)

「自分で言ったんじゃないですか」 「一回性ね……。おなじ食材をおなじ調理法でおなじ顔ぶれと食べたって、毎回同じ会食になるわけじゃないじゃん? 楽しい時は美味しく食べられるし、誰か機嫌が悪かったりすればまずくなっちゃうよな …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(1)

 次の日だ。今日も朝から隊長は料理に興じている。料理鉢の中には何か白いネバネバとしたものが入っている。 「薄餅(バオピン)でも作るんですか?」 「いや。撥魚児(ファーイル)」 「なんですかそれ」 「剔尖(ティージエン)だ …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(2)

分かりやすい反応だな。動揺しすぎ。気色(キショ)いんだけど。俺の前に剔尖(ティージエン)を貰っていた奴が興味を持った様子で聞いて来た。 「なに? 昨日おっしゃってたことって」 俺はついニヤニヤと笑ってしまった。 「いやあ …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(3)

 隊長は洗い終わった鍋を重そうにぶらさげながら、トボトボと天幕の中に入り、寝台の上に乗ると頭から布団を被って横になった。 「えっ! 朝から?」 「体調不良」 「え、マジに具合悪いんですか? お医者さん呼びましょうか?」 …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(4)

 ああ、面倒くさいなあ。こんなふうに寝込まれたら、俺のせいみたいじゃないか。面倒くさいが、黄屯長に報告に行く。 「黄屯長、隊長がウツで寝込みました」 「は?」 ほんと、「は?」だよな。俺もそう思う。 「今朝、趣味の料理を …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(5)

「ええと、その話を暴露していいのかどうか分かりませんけど、とにかく昨日隊長がちょっと小っ恥ずかしいようなことを言っていたんで、今朝それをネタにしてみんなの前でからかったんです。そしたら隊長、急に怒ってふて寝しちゃったんで …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(6)

 なんなんだ? そんなに重症なのか? 今朝までニコニコしてお料理していたくせに、おかしいぜ。常々隊長のことを危なっかしい人だと思っていたが、こうまで弱っちいとは知らなかった。命の恩人なのに悪いことをした。しかしそもそも俺 …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(7)

 翌朝、起床の合図とともに飛び起きて天幕を飛び出すと、駆け込んで来た黄屯長と正面衝突して目の前に星が飛んだ。危ないよ! 鼻血が出ちゃったじゃないか。黄屯長は上唇を押さえてツーンとしたような半泣き顔で固まっている。 「おは …

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八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(8)

「あの、ご機嫌はいかがですか」 隊長は恥ずかしそうに笑った。 「もう治ったよ。っていうか、機嫌が悪かったんじゃなくて、体調が悪かったわけ」 「朝元気だったのに突然寝込むからびっくりしたんですけど」 「すみませんでした。実 …

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八十四、以食為天(食をもって天となす)(1)

 翌日、俺が起きた時には、隊長はルンルンと餅干(ピンガン)を焼いていた。俺はびっくりした。 「えっ、なんでよりによって餅干(ピンガン)?」 このあいだ、川の水で湿った最悪の餅干(ピンガン)を食ったばっかりなのに! 隊長は …

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八十四、以食為天(食をもって天となす)(2)

「隊長は常に肌身離さずおやつを持ち歩いてるんですか? 身辺に食べ物を欠かしたことがないように見えますけど」 「うん。食べ物は欠かさない」 「どうしてそこまで食に執着するんですか?」 「食えれば死なねえって信仰の持ち主だか …

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