七十、蜂追い(1)

 山の木々もすっかり濃い緑色になった。木漏れ日が気持ちいい。今日の遠足の目的は何だろう。きっと、演習という名目でクワガタかカブトムシでも探しに来たんだろう。隊長、昆虫大好きだからな。  渓流にでくわしたところで行軍を止め …

続きを読む七十、蜂追い(1)

七十、蜂追い(2)

 隊長が一枚の地図を広げて、屯長たちを集めて言った。 「これから俺が蜂に目印をつけるから、みんなはその蜂が巣に戻ってくのを追跡して巣のありかをつきとめて下さい。これがここらの地図だから。どうやって追跡するか皆さんで計画し …

続きを読む七十、蜂追い(2)

七十、蜂追い(3)

 見事に肉団子作り完了。蜂さん、よくがんばったね。と拍手でもしたい気持ちで眺めていると、蜂は一瞬にして飛び去った。 「あっ。一瞬で飛んで行きましたけど」 隊長は不機嫌顔で言った。 「追え」 「行ったぞ! 戌亥(いぬい)の …

続きを読む七十、蜂追い(3)

七十、蜂追い(4)

 最初に蜂に目印をつけた地点から三、四里離れたところに、蜂の巣はあった。結局、目印のついた「司馬懿」を見失った後、たまたま通りかかった他の「武将」を追跡して敵の本陣を突き止めたらしい。うちの屯が山の中を迷走したあげく集合 …

続きを読む七十、蜂追い(4)

七十、蜂追い(5)

 蜂の巣の駆除方法は、隊長が自分で作って持ってきた発煙筒を、蜂の巣の穴という穴にぶっこんで、煙で蜂の動きが鈍った隙に巣を掘り出して殲滅(せんめつ)するらしい。駆除が目的なら掘り出してそのまま巣ごと焼けばいいはずだが、隊長 …

続きを読む七十、蜂追い(5)

七十、蜂追い(6)

 よくやるぜ。馬鹿だろ。隊長は防護服を着込んだまんま成虫をせっせと油の鍋から出している。 「ちょうどいい具合に仕上がったぜ~。へっへっへ」 もう。何者だよオッサン。仲純が巣に戻ってくる蜂に対する警戒態勢をとっている傍らで …

続きを読む七十、蜂追い(6)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(1)

 兵隊の単独行動は厳禁なので、李叔遜(りしゅくそん)と一緒に五日かけて八角(はっかく)を届けに行ったのだが、帰って来ると同屋(ルームメイト)の劉子安(りゅうしあん)が完全に羌族(きょうぞく)化していたからびっくりした。彼 …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(1)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(2)

「しかしまあ、俺の卵泥棒はほとんど遊戯だけど。そういうちっちゃい犯罪って、若い頃はむやみに楽しいじゃん?」 「ほんと悪党ですね」 「自分の中の悪の要素を自覚して、それが大きな災いに結び付かないようにうまく対処して世間との …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(2)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(3)

「なんか弾(はじ)けてるっていうか下品っていうか、今にもギャハハハハとか言い出しそうで嫌なんですけど」 「言いたいなら言わせてあげなよ。お兄さんも大変なんだよ。女子供やお年寄りに囲まれて、みんなをがっかりさせないように頑 …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(3)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(4)

 部屋の外から李隊長の声が聞こえてきた。 「ああなんかいい匂いがするよ~? なにこれ八角(はっかく)~?」 言いながら、顔を上に向けて鼻をクンクンさせながら、李隊長がふらりと部屋に入って来た。 「はい。微量ですけど。よく …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(4)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(5)

「そういうふうに呼ばれてるんですか? 知りませんでした」 「ああそっか、こういう話って本人の耳にはなかなか入ってこないものだもんね。アハハハハ。楊長史がなんか異度くんに対して腹を立てて、飼い犬に手を噛まれたって言ったんだ …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(5)

六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(6)

「楊長史(ようちょうし)といい馬(ば)参軍(さんぐん)といい、どうして丞相は人格的に欠陥のある人ばっかり重用するんだろうねえ」 「能力主義なんじゃないですか。能力主義の人材登用方法を用いていると、儒教的価値観からはみ出し …

続きを読む六十九、楊儀威公(ようぎいこう)(6)