八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(1)

 今日は隊長は夜明け前から王(おう)仲純(ちゅうじゅん)と一緒にサソリ獲(と)りに行っている。昨日隊長が何気なく「毒を持ってる生き物は旨いやつが多い」と言っていたら、仲純(ちゅうじゅん)がサソリを食ってみたいと言い出して …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(2)

 指先で書きつけをつまみ上げながらしげしげと眺めていると、隊長がルンルンと部屋に入って来た。 「あの、」 先ほどの顛末(てんまつ)を報告しようとしたが、思わず妙な質問をした。 「もしかして今、十歳くらいのガキンチョに化け …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(3)

 仲純がサソリの入った壺(つぼ)を指定された場所に置き、横にしゃがみ込んで中の様子を楽しげに眺めている。 「ねえそれ、蓋(ふた)しとかなくて大丈夫なの?」 「いや、よじ登ってくるから蓋は必要だ」 「じゃあさっさと蓋してく …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(4)

 夕方になった。一日の課業を終えて隊長室に行く。隊長はまだ戻って来ていない。サソリ、静かだな。カサリとも言わないぞ。…………。部屋の片隅に置いてある、網(あみ)と石の乗っかった壺(つぼ)。俺はそれの対角線上に、めいっぱい …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(5)

 夕食の時間になった。普段ならルンルンと外へ出て行ってどこかの什(じゅう)に乱入して勝手に飯(めし)を食う隊長だが、今日はそういうわけにもいくまい。 「あのお、夕食の時間ですけど、食事はここへお運びしましょうか?」 「ん …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(6)

 胡椒(こしょう)をゴリゴリと碾(ひ)いて、生姜(しょうが)を滅多(めった)切(ぎ)りにし、塩とともにドカドカと鍋に投入して汁を注いで火にかける。グツグツと煮えたぎったところを椀に注ぎ入れ、隊長に献ずる。椀から立ち上る湯 …

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八十九、辛辣青菜豆腐湯(シンラーチンツァイドウフタン)(7)

「無理だと思ったらなにも無理して食べなくていいじゃないですか。自己管理がなってないんじゃないですか」 「気にかけて、いろいろやってくれてたから、嬉しかった」 「人がなんかやってくれたからってなんでも尻尾(しっぽ)振(ふ) …

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八十七、失敗作(1)

 俺は体に日課時限が刻み込まれた精鋭だ。通常、起床の太鼓が鳴る前に目を覚ますことはまずない。しかし今日は、何故だか早く目覚めてしまった。クソッ。  異常に損した気分で、隊長を探しに行く。きっとまた何かおいしいおめざでも作 …

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八十七、失敗作(2)

「知るかよ。火傷してねえ? 水で冷やしといたほうがいいぜ」 「手なんかどうでもいいですよ」 「どうでもいいわけあるかよ。馬鹿か」 「馬鹿に馬鹿って言われたくない。大丈夫ですか?」 「もう治まってきたぜ。ああ焦(あせ)った …

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八十七、失敗作(3)

「自由人のくせして時々変に自己流にお堅いから、本人が真面目なつもりでいるわりには周りにはちっとも伝わっていないという、こういうのを変人と呼ぶんだろうな」 「かなり正確に自己分析できてるんですね」 「自己分析できてても直す …

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八十七、失敗作(4)

「自分で言ったんじゃないですか」 「一回性ね……。おなじ食材をおなじ調理法でおなじ顔ぶれと食べたって、毎回同じ会食になるわけじゃないじゃん? 楽しい時は美味しく食べられるし、誰か機嫌が悪かったりすればまずくなっちゃうよな …

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