三、おもてなし(1)

 俺達が呑気(のんき)に凱歌(がいか)を歌いながら兵営に戻ったのは、巳(み)の刻も半ばを過ぎた頃だった。柔らかな日差しと満腹感が疲れた身体に心地よい眠気を運んでくる。今日は午後は休みだという。心ゆくまで昼寝を楽しもう。想 …

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三、おもてなし(2)

 隊長は楽しげに膳の上に皿を並べている。また趣味の料理にいそしんでいたらしい。薄気味悪いので見つからないうちにそっと逃げ出そうと後ずさる。折悪しく隊長が顔を上げ、ばっちりと目が合った。 「お、ちょうどいい所に、じゃなかっ …

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三、おもてなし(3)

 隊長室の前に到ると、隊長は貴族が友人を誘う時のような優美な動作で部屋の入口を指し示した。 「どうぞ。取り散らかしておりますが」 時々やけに丁寧なのはなんなんだろう。部屋だって微塵も散らかってないじゃないか。なんかイラっ …

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三、おもてなし(4)

「いえ、もう、ごちそうを目の前にしちゃあ、これを蹴って仕切り直せっていう選択肢はないですよ」 「据え膳食わぬは男の恥? そりゃ違う意味になっちまうな。ひゃっひゃっひゃっ。まあ一献」 「恐れ入ります」 「李仲毅くんのますま …

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三、おもてなし(5)

「どうぞ箸付けて下さい。お嫌でなかったら」 「嫌なわけないですよ」 仲毅は犬のようにペロリと舌舐めずりをしながら、ほかほかと湯気を立てている一皿に箸を伸ばす。ああ旨そう! なにそのトローリとしたやつ? どうですか、お味は …

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三、おもてなし(6)

「いいじゃん。何(なん)ぞ燭(しょく)を秉(と)って遊ばざる、況(いわん)や昼においてをや。はい乾!」 「乾――」 ニヤつきながら里芋をぱくりと口に入れる。でどう、お味は? 「…………」 無言かよ! 「素朴なもんばっか食 …

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三、おもてなし(7)

「うわヤッター!」 「浮かれてないでお勧めしろって」 「はい。じゃどうぞ。乾杯!」 「乾杯! ――」 うわ旨んまっ! なにこれ。蜂蜜みたい。って、喩(たと)えが分かりづらいか。すげえいい香りするんだけど。鼻とか喉とか、全 …

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三、おもてなし(8)

話に気を取られながら何気なく冷菜を口に入れる。と、雷鳴が轟(とどろ)いたわけでもないのに梅を煮て英雄を談じる先帝さながらに箸を取り落としそうになる。なんだこれは。ただの大根だろう? これも妖術の力だろうか。隊長の料理をナ …

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