六十八、葫藘絲(フールースー)(3)

 俺を無垢な歓喜の草原に置き去りにしながら、隊長は静かに言った。
「その子にとうのいいやつでも買ってあげれば?」
「は、はあ?」
突然、何を言い出すんだ?
「えっと、その話をどこで、っていうか、そんなはずはない! 誰にもしゃべってないはずだ! 超能力ですか?」
「さっき自分でぺらぺらしゃべってたじゃん。おかげで俺はくしゃみが止まらなかった」
「なんでくしゃみを……」
隊長は楽しげに微笑んでいる。畜生。俺はぼそぼそと言った。
「買ったとして、どうやって渡せばいいんですか?」
「ろくに会話したこともないわけ?」
「はあ」
「純朴な青年みたいな顔をしておずおずととうの入った箱を取り出しながら、こんなふうに言ったらいいんじゃねえかな。『おれ仕事の拘束時間が長すぎて金もらっても使う暇ないからつまんねえなと思ってたんだけどさ、このあいだ珍しく買い物をしたんだ。貰ってくれないかな』って。ひゃっひゃっひゃっ、笑っちまう!」
「え、笑われたらだめじゃないですか」
「やめやめ。まともな女だったら『こんなの貰えないよ』って不気味がられて玉砕だろう。にっこり笑って簡単に受け取っちまうような女は要注意人物だな。それによ、粗末なとうを不機嫌顔で身につけてた女の子にいきなりピカピカのとうなんか贈ったら嫌がらせにしかならねえぜ」
「まじめに考えて下さいよ」
隊長がまたくしゃみをした。
「さっきからそのくしゃみ、なんなんですか?」
「いやぁ……なんかムズムズしちまうよ。ギャハハハハ」
「こんな場合、隊長だったらどんなふうにするんですか?」
「ろくに会話をしたこともない相手に贈り物をするなんて難し過ぎるな。まず当たり障りのない話題で話しかけてなんとなくいい感じに持ってけたら、次に会う時には受け取ってくれるかも」
「どこの誰かも分からないんですけど」
「家に帰ってお母さんに年格好を説明して心当たりがないか聞いてみれば?」
「ええ~、嫌だなあ」

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“六十八、葫藘絲(フールースー)(3)” に2件のコメントがあります

  1. 隊長さん、戦闘・料理だけでなく
    恋愛相談もOKなんですね
    ゆっくりと距離を縮めることすすめてるので
    季寧くんのこと考えますね

    仮面ライダードライブ、ビルド、ジオウの系統のデザインがお好きなんですね
    シャープな感じてカッコいいですよね
    初めてゴーストのデザイン見た時、
    ついに仮面ライダーも経費削減の対象になったんだぁって思いました(汗)

    私は仮面ライダーは昔から好きで
    平成仮面ライダーシリーズは
    今のところビルド、エグゼイド以外は
    TSUTAYAでDVD借りてちょいちょい観てます

    五丈原への道のりは一歩一歩肉迫する展開なんですね
    歩兵は大変ですね(汗)

  2. 隊長もだてに年を重ねているわけではないので恋愛に関してもそれなりの見識はあるはずですが、隊長のまねをしても結婚できなさそうなところが切ないですね。
    季寧くんの相談(?)には真面目に乗ってあげるつもりのようです。
     
    経費削減という見方は面白いですね!
    ジオウは過去の平成ライダーやアナザーライダーのコスチュームも用意しないといけないので、たくさんの経費がかかりそうですね。
    私は仮面ライダーはいくつかのシリーズしか見ていないのですが、どのライダーを見てもそれぞれ面白くてかっこいいと感じます。
    平成ライダーではドライブが、昭和ライダーではブラックが一番好きです。
    令和の時代のライダーにも期待したいと思います!

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