七十、蜂追い(3)

 見事に肉団子作り完了。蜂さん、よくがんばったね。と拍手でもしたい気持ちで眺めていると、蜂は一瞬にして飛び去った。
「あっ。一瞬で飛んで行きましたけど」
隊長は不機嫌顔で言った。
「追え」
「行ったぞ! 戌亥いぬいの方角!」
おつ地点通過! 戌亥いぬいの方角!」
へい地点確認、追跡します!」
よく分かんないけど。とりあえず戌亥いぬいの方角向けて雪崩なだれのごとく爆走する。隊長は誰よりも駆けっこが速いくせに、追跡には加わらず、走り去っていく部下たちの背中に向けて悠然と言った。
「蜂の飛ぶ速さって驚異的だよな~。おれ馬で走ってる時に蜂に追い越されたことある。びっくりしたよ」

 ああ、暑い。汗だくだくだ。蜂は遥かかなたに飛んでったんだから、なにもこんな全速力で追いかけなくったっていいじゃないか。前の方に配置されてる連中がちゃんと追ってるよ。合図が聞こえる。しかし手抜きをしていたらきっと隊長が超能力で見抜いて激怒するに違いない。ああしんど。
 蜂って、餌を取ったらまっしぐらに巣をめざして飛んで行くんじゃないのかな。なんだか、飛ぶ方向が変わっているような気がする。追っ手に気付いて巻くつもりかな。無敵の毒針と雲霞うんかのごとく出て来る仲間と馬にも匹敵する機動力を持っているうえにそんな知能まであるのかよ。人類最大の脅威は虎でも熊でもなく蜂なんじゃなかろうか?
 暑い。死ぬ。どっちを目指しているんだろう。どこからともなく意味不明の指笛ゆびぶえが聞こえる。指笛というのはもはやほとんど伝説と化したいにしえの軍用通信手段だ。方角や数字などの簡単な情報伝達ができ、古い兵隊の中には指笛を解する者がまれにいるそうだが、実戦で使われているところなんか見たこともないし、俺たちも教わったことはないし、誰も知らないと思う。隊長が吹いているのかな。そんなの聞いて理解できる奴なんかいるわけないのに馬っ鹿じゃねえ。

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“七十、蜂追い(3)” に2件のコメントがあります

  1. 指笛?
    蜂に指示をだしてるのでは?
    隊長さんなら蜂も操れそうですね!

    蜂追いって実際にあるんですね!
    蜂に綿をつけるなんて、最初に考えた人、発想スゴいですね!

    Twitterの冬瓜料理、美味しそうですね。
    小説の冬瓜料理は、まるクルルさんの実体験が元になってるんですね。
    味付けは塩だけなんてシンプルですね。
    まるクルルさんの冬瓜料理も塩で味付けされてるんですかね?

    • 蛇使いとか猛獣使いとかいろんな人がいますが、昆虫を自在に操れる人がいたらすごいですね。
      蜂を操り軍事利用する人があらわれたら、ものすごい戦力になりそうです。
      蜂には勝てる気がしません……
       
      蜂の子はおいしいようですので、蜂追いも大昔からありそうですよね。
      綿をつけることを思いついた人もすごいですが、それを素手でやる人もすごいと思います。
      蜂追いの映像を見ていたら、けっこう平気でやっていたのでびっくりしました。
       
      うちの冬瓜料理の味付けは酒、みりん、砂糖、醤油です。塩はほんの少しだけ入れます。
      醤油が入らなければもっと透明できれいな煮物になるのかなと思います♪
      冬瓜画像

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