七十、蜂追い(6)

 よくやるぜ。馬鹿だろ。隊長は防護服を着込んだまんま成虫をせっせと油の鍋から出している。
「ちょうどいい具合に仕上がったぜ~。へっへっへ」
もう。何者だよオッサン。仲純が巣に戻ってくる蜂に対する警戒態勢をとっている傍らで、隊長は道具類を片付け、蜂の巣が完全に焼けたことを見届けてから火を消した。後始末が終わると、仲純と一緒に悠然とみんなが待機している場所に歩いて来る。
「ほら見ろ、今日の収穫」
うわっ、怖っ!
「はい、そらえび。つまみたい方どうぞ。先着順、売り切れ御免」
こう言いながら自分で半分ぐらいガバリと取って、それをそっくり仲純に渡した。
「これ仲純の分ね。お疲れ様。頼もしい助手だった」
「ありがとうございます! めっちゃ楽しかったですよ!」
え~、俺、もし蜂退治を手伝わされたあげく蜂料理なんて押しつけられたら、二重の責め苦だよ! みんなほかほかと湯気を立てている蜂に殺到して
「うめえ!」
「エビだエビ!」
と騒ぎ出す。異常だ。仲純は旨そうに蜂の成虫をバリバリと食いながら、幼虫の入っている鍋をのぞきこんだ。
「こっちのはどうやって食べるんですか?」
「どうすっかなあ。どうやっても旨いけど」
言いながら、隊長は鍋の中の幼虫を一匹摘まみだし、そのまま――
 俺が顔面蒼白がんめんそうはく発汗はっかん、目まい状態になっているかたわらで、仲純がはしゃいでいる。
「蜂の幼虫って生食可能なんですね!」
「蜂の子を生で食って人間が死んだなんて話は聞いたことがねえ」
死にさえしなけりゃいいって基準なのか……っていうか、俺たぶん死にます……心理的に……。
「カタツムリは生で食うと死ぬことあるらしいけどな。殻ごと火にぶっ込んでしっかり焼いて食えばいいよ」
なんの指南だ。やめてくれ。
 俺がふらふらしていると、隊長がこっちを向いてにこにこしながら一つの壺を持って来て、俺に見せた。
「はい、これ。前に約束してたオオスズメバチの蜂蜜漬け」
――俺は、生まれて初めて卒倒そっとうした。

《七十、蜂追い 終わり / 次話に続く》


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“七十、蜂追い(6)” に2件のコメントがあります

  1. 蜂の子の生食………
    ハチの蜂蜜漬け…………
    ( ´゚д゚)

    服を着たままお風呂に入る
    親子で考えてること同じなんて
    なんか嬉しいですね!

    びゅうリップちゃんって、微妙というかゆるいですね。リンク先のサイトのコメントが厳しいですね(汗)

    まるクルルさんの犬の画像、
    小説と同じで、ゆるい感じが良いですね(笑)

    前髪パッツンなんですね
    リンク先の「おんな城主 直虎」の写真みて、
    まるクルルさんて、柴咲コウさんみたいな感じなんだろうなと思いました。

    「ただこの瞬間を味わうがいい」
    『ショッケンひにほゆ』を読んでるときは
    「ただこの瞬間を味わってます」
    みたいな感じです

    返信
  2. 前にもお話しした長野の蜂追いの番組では、巣をゲットした方がうれしそうに蜂の子を食べていらっしゃいました。
    頑張ったご褒美グルメのようです。
    オオスズメバチの蜂蜜付けは滋養豊富なようで、これも欲しがる方が大勢いらっしゃる様子です。
    虫が苦手な季寧くんにはちょっときつかったようですね(笑)
     
    娘が子供時代の自分のようなことをしているのを見るのは面白いです。
    愚かなことをしているなぁと思っても、こういうことをして大人になるんだなと生暖かく(?)見守っています……
     
    びゅうリップちゃんはかわいいのかという疑問は、私もちょっと感じました。でもあのゆるい感じが好きです!
    私の犬の画像もゆるい感じがだせたかなと自画自賛しながら使っております。
    小説も低刺激で「楽しみて淫(いん)せず、哀しみて傷(やぶ)らず」(論語)みたいな匙加減で書けているかなと思います。
     
    私の前髪はパッツンなうえに、最近は湿気でくるくるしております。
    柴咲コウさんをどう加工すれば私になるかなといろいろ考えてみて、虚しくなってやめました(笑)
     
    仮面ライダージオウのウォズの「ただこの瞬間を味わうがいい」は名言だなと思いました。
    『ショッケンひにほゆ』を無心に楽しんでいただけているようで嬉しいです。
    今後ともよろしくお願いします!

    返信

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