七十一、水魚(すいぎょ)(5)

 何年か前、楊長史ようちょうしのご親戚の楊顒ようぎょうという人が、丞相の働き方に対して次のように諫言かんげんしたそうだ。いわく、丞相はいつもご自分で帳簿を確認していらっしゃいますが、物事を治めるにはやり方というものがあり、上の者は下の者の職掌を侵してはならず、下の者は上の者の職掌を侵してはなりません。
 家の中の事にたとえれば、召使いは耕作や炊事を行い、鶏は朝を告げ、犬は泥棒に吠え、牛は重い荷物を負い、馬は遠くまで行くもので、それぞれが自分の本業をまっとうしていればすべてうまくいき、家のあるじは悠々としていればいいだけです。
 しかるに、あるじみずから労役をになってしまえば、心身ともに疲れ果て、結局何一つ満足にこなせないでしょう。主が召使いや鶏や犬よりも愚かだからではありません。主としてのありかたに反しているからです。
 昔の人はこう言ったものです、して道を論ずるものを王公と言い、動いてこれを行うものを士大夫したいふと言う、と。昔、丙吉へいきつは道の横に死体があるのを見ても取りざたせず、牛があえいでいるのを見て憂慮したといいます。陳平ちんぺいは貨幣や穀物の残高を自分では把握せず、それにはそれ担当の者がいると言いました。いま丞相は細事に至るまでご自身で処理なさり、終日汗を流しておられますが、やりすぎではありませんか。とまあ、こんなふうに言ったそうだ。
 で、それに対して丞相は、こんなふうに言ったとか言わなかったとか。「私もそのことが分かっていないわけではない。私は先帝からご子息を託され、この重任ゆえに、他の者が私のように心を尽くしてくれないことをただ恐れるばかりだ」

 丞相がそう答えたとすれば、それはどういう意味なのか。それに対する考察が、隊長のさっきの発言だ。「丞相閣下が、俺も頑張ってるからみんなも頑張れよ~っておっしゃってんじゃん? いや、違ったかな? みんなが頑張らねえから俺ばっか一人でせかせか頑張んなけりゃならねえってグチってたんだっけ? ギャハハハハ」

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“七十一、水魚(すいぎょ)(5)” に2件のコメントがあります

  1. 諸葛孔明が、頑張り過ぎたのは
    先帝にご子息を託されたのもあると思いますが、馬謖の件で責任を感じてたのもあるのかなと考えてます。

    台風の影響は、ほとんどありませんでした。テレビで避難情報が出まくりだったので
    慌てて家の台風対策を行ったんですが、拍子抜け?な感じでした。

    台風が雨雲を吹き飛ばしたのか
    来週、梅雨明けしそうです

    • 孔明さんはなんでもかんでも一人で背負いすぎだったんではないかと思ってしまいますね……。
      頑張り屋さんなのは尊いと思いますが、もっとみんなを頼ってくれたらよかったのになと思います。
       
      よんよんさんのところでも台風の影響はほとんどなかったんですね。ホッ。
      梅雨が明けたらいよいよ暑さの本番がやってくるでしょうか。
      暑さに気をつけてお過ごし下さいませ!

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