八十、韓英異度(かんえいいど)(7)

延康えんこうなんて聞いたことありませんよ。どうせ曹丕そうひが勝手に決めたインチキ元号でしょう?」
「れっきとした漢の元号だ。魏への禅譲ぜんじょうがあったのはその年の十月、それが魏の黄初こうしょ元年だ」
「おかしいじゃないですか。だって、みかどしいされたっていう情報が伝わったから、うちの先帝が帝位についたんですよね。それが確か建安二十六年で、うちの章武しょうぶ元年ですよ」
「クックック」
「うわ何その笑い方」
「おかしいぜ。建安けんあん延康えんこうと改元されてから丸一年余り経っていたというのに、どうして先帝は建安二十六年なんていう間抜けな年号を使っていたんだろうな」
「それはきっと、その情報が伝わってきていなかったからですよ」
うとすぎるぜ。ありえねえ」
「えーっと、それって、先帝がご自分の都合のいいように情報を隠蔽いんぺいしてたってことなんですか?」
「疑え。調べろ。そして考えるんだ」
「そんなこと何の役に立つんですか?」
「愚民じゃなくなるためだよ」
「あのお、いっつも言ってるじゃないですか、自分なんにも不満なんてないって」
「季寧は幸せに育った人だからな。今の生活を守って、自分と同じ幸せを享受できる人たちを再生産していければそれで満足なのかもしんねえな」
「そうですよ。よく分かってるじゃないですか」
「張一族の幸せはどんなふうにして支えられてきたんだ」
「えーっと、普通に、みんなで協力してですよ」
「お父さんが戦死して、二人のお兄さんも戦死して、今は季寧が兵役についてる。おまえが結婚して可愛い男の子が二、三人生まれたとしたら、その中の一人は確実に兵役につくことになるだろう。お前の家が兵戸である限り。未来永劫それが繰り返されていくことに満足しているなら、お前は何も考える必要はないだろうな」
「あのお、前にも言いましたよね。他人の不満をあおって自分の思うように動かそうっていうのはやり方が卑劣だって」
「世の中、卑劣な奴はいっぱいいるんだぜ。だから疑え。調べろ。そして考えるんだ。自分は何をやって生きるのかを」
「えーっと、だから、現状維持」
「あっそ。へっへっへ、そいつはいいこと聞いちまった。そんならてめえは未来永劫俺様の従卒だ。ざまあみやがれ」
「従卒じゃないですよ。勤務兵。当番なんですからいずれ下番するものでしょう」
「そうだな。下番した後にどんな薔薇ばらいろの人生が待ってるか知らねえがよ」

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“八十、韓英異度(かんえいいど)(7)” に2件のコメントがあります

  1. 隊長さんの
    「疑え。調べろ。そして考えるんだ」の話をうけ、延康を検索したんですが、
    曹操が亡くなったのにあわせた
    元号なんですね。

    劉備が情報を隠蔽したというよりは、諸葛亮たちが劉備を皇帝にするために情報を操作したのかなと思いました。

    隊長さんが諸葛亮のご機嫌をとれば
    少しは話を聞いてもらえるかもしれませんが、性格的に厳しいですね(汗)

    本日、関東は気温が40度近くまで
    上がるみたいですね。
    熱中症お気をつけください。

    返信
    • 調べて考えて下さったんですね!
      劉備が隠蔽したのでも周囲が情報操作したのでも、グレーなイメージには変わりありませんね……
      (隊長の疑いが当たっているかどうかは分かりませんが。笑)
       
      隊長は諸葛亮が掲げている漢室復興という目標に向かって自分が最善だと思い込んでいる方法を提案しているので、諸葛亮がなぜそれを聞き入れないのか理解できないようですね。
      もっと冷静に相手の様子を見ながら動けるといいんですけれども。
      一生懸命であればあるほど冷静さを失っていきますね……。
       
      今日は関東は暑くなるんですか。
      お気遣いありがとうございます。気をつけます。
      沖縄は暑いところのようなイメージがありますが、40度なんていう極端な暑さはないですよね?
      周りの海が天然のクーラーなのではないかと思います!

      返信

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