八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(1)

 次の日だ。今日も朝から隊長は料理に興じている。料理鉢の中には何か白いネバネバとしたものが入っている。
薄餅バオピンでも作るんですか?」
「いや。撥魚児ファーイル
「なんですかそれ」
剔尖ティージエンだよ」
「あ~! それ、死んだばあちゃんの得意料理でしたよ!」
「そっか。懐かしの味とは違うもんができあがるかもしれないけど」
「ばあちゃん、作る度に毎回味が微妙に違ってたんですけど」
「得意料理なのに?」
「そういう、テキトーというか、おおらかなところが、ばあちゃんなんですよねえ」
「季寧のお宅に笑顔が絶えないのはおばあさんのご遺徳かもしんないね」
「お椀の端から生地をポチャポチャやるとこ見たいなあ」
「ま、お楽しみに」
素直に楽しみにしつつ横にたたずんでいたら、
「点呼は?」
と言われた。そうだった。絶対わざとやってるだろ、俺。
 点呼他、終え、全力疾走で戻り待機する。椀に入った柔らかい生地を、椀を傾けてふちからこぼれそうな状態にしたところで、箸を淵に押しつけて生地を細長く断ちながら煮えたぎった湯にぽちゃぽちゃと落としていく。隊長、上手だな。……ばあちゃん。懐かしい光景だ。

 手料理を貰う順番の奴らの椀に、隊長がご機嫌で剔尖ティージエンを注いでいく。ああ~、旨そう。ワクワク。俺はふつうにいつも通り椀を持って待っていたのだが、隊長はなぜか俺の番が来ると気まずそうに目を伏せて、ためらいがちに剔尖ティージエンをよそった。……なんか、気持ち悪いな。
「あのお、なんですか、その態度」
「どうかお気になさらずに」
顔をそむけて手でシッシッとやる。
「なんで突然そんな毛嫌いしたような態度で接するんですか」
「失礼しました。毛嫌いなんかしてないぜ」
「異常にモジモジしてませんか?」
「どうか気にしないで下さい」
「あ、まさか昨日おっしゃってたことを気にしてます?」
隊長はおたまをぽとりと取り落として後ずさった。

※今回隊長が作っている剔尖という料理の動画をみつけましたのでリンクを貼っておきます。 2分30秒過ぎからが季寧くんの描写している部分になります。
山西面食第四集_4.剔尖 How To Make Chinese Noodles(Chinese Language)
麺の成型方法が刀削麺と似ているので、もしかすると同じ頃(モンゴル支配の頃)の発祥かもしれませんね。
そうだとすれば三国志小説に登場するのはおかしいのですが、三国時代の技術力でも充分作れるものであることと、明末清初に成立した三国志演義準拠小説であることから、それ以前の時代のものなら出してもよかろうと考えこのままにしておきます。
刀削麺の発祥について書いた記事のリンクも貼っておきます。
モンゴルの漢族支配から生まれた名物料理「刀削麺」

ページ公開日:

“八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(1)” に9件のコメントがあります

  1. 隊長さんの料理から始まる
    ほのぼの回ですね?

    第五次北伐は悲しい展開が待ってますから
    少しでも多くほのぼの回あるといいですね。

    Twitterの壁紙?甘酒に変わってますね。
    私、甘酒も好きで夏はトマト甘酒にはまってました。
    青いスパークリングの方は飲んだことあります。
    写真見て黄色のを、
    仕事帰りに買おうとスーパーによったら、ちょうどワゴンセールなってて、50円引きでゲットできました(笑)

    家事が落ち着いたら飲もうかと思ってます。

    • 今回は基本的にはほのぼのですが、少し事件が起こります。
      明日の更新をお楽しみに……
       
      これからもほのぼの回はちょくちょくありますのでご安心下さい!
       
      ツイッターのヘッド画像はこれまで使っていたオムライスを見飽きたので、スマホに入っていた画像の中から無難そうなもの(?)を選びました。
      これが最高に気に入っているわけではないのですが、おいしそうだからいいかなぁと思っています。
       
      甘酒、おいしいですよね!
      レモン味のスパークリング甘酒がお買い得になっていてよかったですね。
      秋になり、夏向けの冷やして飲む甘酒がセールになったのでしょうか。
       
      レモン味は夏場にスカッとしそうな味わいだったと記憶していますが、甘酒は一年中いつ飲んでもおいしいですね♪

    • 動画のリンクありがとうございます。
      生地をシュッシュッしてますね。
      部下の前で披露したら
      好感度上がりそうですね(笑)

      • 見るほうも作るほうも楽しそうな調理法ですよね。
        隊長はこういうの好きそうだなと思って小説に出してみました。
        ただ、麺の成型方法が刀削麺と似ているので、もしかすると刀削麺と同じ頃の発祥なのかもしれないなと思いました。
        それだとモンゴルの頃なので、三国志の話に登場するのはおかしいということになりますね(汗)
        三国時代の技術力でも充分作れるものであるということで、気付かぬふりで小説に出してみました(!)
        三国志演義準拠小説ですから、明末清初あたりまでの文物は出ていてもいいということで……(笑)
        以前はじめての三国志で刀削麺の発祥について書いた記事のリンクも貼っておきますね。
        モンゴルの漢族支配から生まれた名物料理「刀削麺」

  2. すみません。誤字でした
    道賀×
    動画○

    刀削麺、リンクありがとうございます。
    ストーリーが面白くなるなら
    時代があってなくても大丈夫だと思います。
    隊長さんなら、本物の剣で生地を削ってそうですね。

    • 誤字とうかがって勝手に修正させていただきましたがよろしかったでしょうか。
      私はスマホの変換候補で思っていたものの隣にあるものを押してしまい誤字になることが多いです(汗)
      しかも急いでいる時ほどなるんですよー(;´Д`)
       
      剔尖は、時代があっていないかもしれません、みたいな注釈を入れておけばいいかな、と開き直ってみました!
      隊長はどんな道具でも上手に料理に活用できそうですが、料理専用の道具を常に持ち歩いているのではないかなぁとも思います。
      食に関しては異常にこだわりそうですよね(笑)

      • 誤字の修正ありがとうございます。
        私も隣にあるものを押してしまいます。

        隊長さんなら料理道具を
        鎧の裏に仕込んでる可能性
        ありますね(汗)

コメントする