八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(5)

「ええと、その話を暴露していいのかどうか分かりませんけど、とにかく昨日隊長がちょっと小っ恥ずかしいようなことを言っていたんで、今朝それをネタにしてみんなの前でからかったんです。そしたら隊長、急に怒ってふて寝しちゃったんですけど、ご自分では体調が悪いって言ってました」
劉什長が俺を小突いた。
「なんだよそれ季寧が悪いんじゃん。隊長に謝れよ」
「隊長の反応が異常すぎるせいですよ!」
「隊長が異常なことなんかとっくに知ってるだろ!」
「そんな異常な人を相手にするのは無理なんですよ! 誰か隊長をまともにあしらえる人がいるっていうんならそいつと勤務兵交替して下さい! なんなら劉什長が面倒みろよ!」
騒動を聞きつけてやってきた王什長を、劉什長が指差しながら頭ごなしになじった。
「王什長、どういう教育してるんだよ!」
王什長はモゴモゴと言い訳をした。
「隊長が甘やかしすぎなんだよ」
「ああほんとロクでもねえ!」
宋屯長が困惑顔で
「言いすぎだぞ」
と言った。どうなっているんだろう。みんな、何をガタガタしているんだ?
「あのお、みなさん一旦落ち着きませんか?」
「お前は他人事みたいによお!」
劉什長がブチ切れた。黄屯長がおずおずと言った。
「とりあえず、ちょっと隊長のご機嫌伺いに行ってみよう」

 ああ、面倒くさいなあ。俺が劉什長に怒鳴られる羽目はめになったのは、全て隊長のせいだ。天幕に入ると、隊長は先刻と寸分たがわぬ形で布団にくるまっている。黄屯長が遠慮がちに声をかけた。
「あの、どうなさったんですか?」
「…………」
返事がない。しばらくして、うつろな声で俺を呼んだ。
「……季寧」
「はい」
廻避牌避客牌、かけといて」
「はい。……」

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“八十五、不如逃跑(にげるにしかず)(5)” に2件のコメントがあります

  1. 面倒なことになってますね(・・;)

    廻避牌かけられたら、
    もうそっとするしかないですね。

    これからどうなっちゃうんでしょうか?

    • 隊長が勝手に機嫌直してくれるのを待つしかないですね。
      部屋に閉じこもるにしてももうちょっと冷静にできなかったのかなと思いますが(笑)
      これからどうなっちゃうのかと考えると、とりあえず季寧くんが困っちゃいそうですね……
      次回をお楽しみに!

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