九十四、遺言(4)

「大事にしないといけませんね。今日、体調悪いところを押して来て下さったんですね。すみません。ありがとうございます」
「異度くんに会いたかったから来たんだよ」
平北へいほくを襲撃するのはちょっと体調が落ち着いてからにしませんか?」
「でも一回平北へいほくの顔は見ておきたいなあ。どんな言い分があるか聞いてみたいし。っていうかまずはとりあえず謝って欲しいよね」
「じゃ、今ちょっと一っ走りして馬平北を呼んできますよ。で、きっちりひざまずいて謝罪して頂きましょう」
「アハハハ、なにもひざまずいてまでなんて。呼びつけて謝らせるなんて、そんなこと簡単にはできないでしょ?」
「どんな手を使ってでもこの場に跪かせてやります。それができない時は私が死ぬ時です」
「エ~? アハハハ」
と、李隊長が冗談だと思って笑い出すより早く、隊長は恐ろしい形相で
「季寧、李さんのお世話よろしくな」
と言い捨てて雷電のような勢いで駈け出して行った。お世話するのは構わないが、隊長、怖すぎる。

 李隊長は呆気にとられたまましばらく横になっていたが、やがてゆっくりと起き上がった。
「悪いんだけどさあ、水くれない? のどかわいちゃった」
水を一杯持って行くと、旨そうに飲み干してほっと溜息をつき、にこやかに
「おかわり」
と言った。ハイ、了解。こんな調子で三杯飲み干し四杯目を飲みながら、
「異度くんにお茶いれてもらいそびれちゃったなあ」
と言いながら立ち上がって、隊長がさっき作って持ってきたお菓子をさっそく取り出して勝手に食べ始めた。呑気な人だ。まあいいや。俺も便乗して勝手に食ってやろう。さっきの隊長の様子はあまりにも恐ろしすぎた。思い出すだけで動悸が打つので、気持ちを紛らすために甘いものでもドカ食いしてやろう。あとで隊長から勝手に食いやがったなと怒られたら、隊長の顔が怖すぎたから慰謝料代わりに食ってやったと言えばいい。
 俺と李隊長は手持ち無沙汰にモリモリとお菓子を食べ、隊長が半日かけて作ったものをほとんど残らず食べつくした。そして李隊長は
「あ~、食べすぎちゃった。オエ。胃もたれしそう」
と言いながらバッタリと隊長の寝台に倒れ込んだ。俺もいいかげん胸やけしてきたが、横にはならずに我慢していた。

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“九十四、遺言(4)” に2件のコメントがあります

  1. 隊長さん、恐ろしい形相‥‥
    李隊長、なんか危なそうですね。
    隊長さんも火傷してるはずなのに
    体調大丈夫でしょうか?

    最後に「いい人生だったなぁ」って
    思えたら良いですね。
    その為にも、今できることを
    一生懸命やるだけかなと思います。

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    • 隊長は元気そうにしていますが、いつも元気そうなわりには病弱なのでよく分からないですね。
      お馬のクロもどうなったか心配ですね。
      そのうち季寧くんにクロへのインタビューをお願いしましょう。
       
      やりがいを感じながら一生懸命何かをできるのは素晴らしいことで、のんびりと寄り道のようなことをしている時間もまた決して無駄なものではないと思います。
      一日一日をありがたく過ごせばいいのかなと思っています♪

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