九十四、遺言(5)

「食べすぎた時に横になるとよけい具合悪くなりませんか? すこし胃が落ち着くまでは我慢して立つか座るかしといたほうがいいと思いますが」
「それよりお湯くれない? なるべく熱っついの。油っぽいもの食べすぎたのがスッキリするかも」
こんな呑気な会話をしているところへ、突然将軍が馬平北を伴って入って来たからビックリしてチビりそうになりながら俺は直立不動になった。馬平北のあとには韓隊長がむっつりとした顔で続いて入ってきた。この場にいる人間のなかで一番ふてぶてしい顔をしている。たいして偉くもないくせに。隊長は俺に向かって指示を出した。
「季寧、ここから十歩離れて待機しててくれ。誰も近寄らせるな。指示があるまで動くなよ」
なんなんだ、十歩って。と思ったが、隊長の顔が怖すぎるので素直に
「はい」
と返事をしてそそくさと退出した。怖すぎる……。
 俺はたまたま部屋のそばを通ったと見せかけて一部始終を盗み聞きしていたらしきりゅう叔允しゅくいんを伴って、きっちり十歩離れた地点で立ち止まり、顔と顔を見合わせた。
「いまの見たかよ」
「見た。たいの野郎、ほんとにひざまずいてたな」
「どんな手を使ったんだろう」
「さあ」
「隊長、なんであんなに怒ってんのかなあ」
「ふつう怒るだろ。あやうく焼死するところだったんだから」
「隊長ってけっこうひどいことされても笑って済ませちゃう人じゃん。あれはよっぽどだよ」
「じゃあ季寧なんで怒ってるのか聞いてみろよ」
「え~、怖え」
「なに今更おびえてんの? 長い付き合いだろ?」
「だから怖えんだって。あんなおっかない隊長見たことない」
「そうかあ? 十日にいっぺんくらいはおっかない顔してんじゃん」
「いやでも今回のは違うんだって。マジだって」
話していると、隊長室から言い争うような声が聞こえてきた。隊長が何やらがなりたて、将軍がもっとでかい声で怒鳴りつけている。どうなってるんだ? と思った次の瞬間、将軍が部屋の扉を突き破って吹っ飛ぶのが見え、続いて隊長が外れかけた扉を蹴飛ばしながら歩みいで再度将軍をぶっ飛ばすのが見えた。慌てて止めに入る馬平北もぶっ飛ばし、腰にすがりついて止める李隊長に気を取られている間に戻ってきた将軍にぶん殴られる。と、李隊長をくっつけたまま将軍をつかまえてボコボコにする。なにやってんだ隊長。死刑だよ。

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“九十四、遺言(5)” に4件のコメントがあります

  1. な、な、な、なにコレ~~~
    Σ(´□`;)
    スゴすぎる展開に驚愕です!
    季寧くんの状況報告に期待します…
    一体何が起こったんだろう…
    離れてたから詳細わからないかな?
    ドキドキ…!

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    • 七星作戦から戻って以来ずっと不機嫌でしたが、とうとう爆発しましたね。
      将軍がしっかりやり返しているところがいいですね。ガチバトルです。
      続きをお楽しみに!

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    • あらっ、よんよんさん、また書き込み時間が4:44ですよ? すごい!

      Wikipediaで「修羅場」を調べたら、こんなことが書いてありました。
       
      ” 修羅場(しゅらじょう、しゅらば)とは、インド神話、仏教関係の伝承などで、阿修羅(アスラ)と帝釈天(インドラ)との争いが行われたとされる場所である。”
       
      阿修羅vs帝釈天ですか……
      続きをお楽しみに!

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